研究課題/領域番号 |
21K03099
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
有光 興記 関西学院大学, 文学部, 教授 (10341182)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コンパッション / マインドフルネス / 肯定的感情 / 心的外傷後ストレス障害 |
研究実績の概要 |
近年,様々な精神症状に対するマインドフルネス瞑想や慈悲の瞑想の効果が明らかにされ,全世界に普及しつつある。メタ分析の結果、PTSDに対するマインドフルネスに基づく瞑想のプログラムは,症状低減に中程度の効果があり,統制群と比較しても有意な減少をもたらすことが示された(Hinton et al., 2017)。マインドフルネス瞑想以外にも,肯定的感情や人生の満足感といったポジティブなウェル・ビーイングを向上させる瞑想法として慈悲の瞑想(loving-kindness meditation: LKM)がある。LKMの12週間プログラムは,アメリカ退役軍人のPTSD症状に効果があることが介入群のみの研究(Kearney et al., 2013)とアクティブ・コントロール(認知処理療法; Kearney et al., 2021)と同等の効果があり,また抑うつや不安についてはより効果があることが明らかにされている。このように,PTSDの治療に関して瞑想法による研究が積み重なっているが,国内の研究は含まれていない。 本研究は,コンパッションに注目し,PTSDの症状に対して慈悲とマインドフルネス瞑想のプログラムに効果があるのかを確かめることを目的とした。また,コロナ禍において注目されているオンライン介入を取り入れ,その方法論について確立することも目指している。 2021年度は, PTSDの診断基準を満たした成人を対象に,介入条件(positive affect training: PAT条件)と対照条件として待機群を設けた無作為化比較試験をオンラインで開始した。これまで300名を超える応募者があり,そのうち20%程度が構造化面接によって参加基準を満たし,オンラインの介入を30名程度が完了した。次年度も引き続き,今年度と同様の研究を続け,介入の成果と改善点を明確にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,PTSDの診断基準を満たす成人を対象に,オンラインで慈悲とマインドフルネス瞑想の12週間トレーニングを行い,症状の改善状況を診断面接と質問紙指標で検討するという計画で進行している。現在,300名を超える応募者があり,そのうち25%程度が電話スクリーニングを通過し,20%程度が構造化面接によって参加基準を満たした。オンラインの介入は、これまでに30名程度が完了した。 事前面接と事後面接での症状の違いから,90%を超える参加者で効果が得られていた。また,第3者インタビューの結果から,効果が認められた参加者の満足感は高いことが分かっている。これらの結果から,12週間の毎日に渡って30分間の瞑想を実践するという研究対象者の負担と比して,一定の効果が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は比較的順調に進行しており、研究費期間内に必要な数のデータを集められると考えている。その中で、できるだけ参加中断者を減らす努力を続ける必要がある。瞑想セッション中に忙しさを理由に参加を取りやめる例の他、電話スクリーニングを通過したにもかかわらず,参加を取りやめた方が一定数存在した。本研究では,トラウマというデリケートな問題を扱っており,電話での丁寧な応答,質疑を行っていくことで,できるだけ多くの方に参加してもらえるようにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費,その他経費で,余裕を見て支出を行ったところ,未使用額が発生した。次年度経費と併せてその他経費に充てる。
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