研究課題/領域番号 |
21K03104
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
南谷 則子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (20729313)
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研究分担者 |
高橋 靖子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20467088)
松本 有貴 徳島文理大学, 人間生活学部, 教授 (90580887)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 保護者支援 / マインドフルネス / 神経心理学 / 思春期の子ども |
研究実績の概要 |
思春期の子どもへの対応や子育てに困難さを感じている保護者を対象とする、マインドフルネス子育て支援プログラムを開発し効果を検証する。 思春期の若者は脳の発達が進行途中である(Powers&Casey,2015)ために、感情が大きく揺れ動き、情動調節の困難さを経験するリスクが高まる。感情表現を促し問題解決に取り組もうとする子どもの姿勢を手助けする親が、子どもの感情調節機能を高めることは認められている(Jin et al.,2017)が、自立心が高まり、大人の権威に対して反発心を持ち始める思春期の子どもと上手くコミュニケーションをとり、良好な親子関係を構築するのは簡単なことではない。 親自身のメンタルヘルスの向上や親子間の温かい交流を生み出すために、効果が実証されているマインドフルネスを適用した子育てプログラムを作成した。神経心理学の知見に基づき家庭に安心・安全な環境を作ることを目的とし、思春期の子ども理解を促している。従前のかかわり方を見直し、子どもとの新しい関係性の構築を促す内容を加えたオンライン講座(30分講座全8回)を開発し、量的及び質的データからプログラムの有効性を測る。 今年度は、昨年度研究分担者と協議を重ね完成させた講座(全8回、一回当たり30分間)を保護者に対して対面形式、オンライン形式、対面とオンラインの混合の3通りの形式で実施した。研究協力者である保護者にはいずれの場合もグループで参加してもらい、講座実施のプレ、ポスト、3カ月終了後の自記式質問紙の記入を求めた。量的データの分析を行うとともに心理の専門家を集め、講座を実施できるファシリテーター養成講座を実施した。これは広くプログラムを周知させるための方略の一つとしての位置づけともなっている。養成講座についてもオンラインのみ、オンデマンド形式、対面とオンラインの混合の形式で行い、実施形式による講座の有効性を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全8回の講座(1回あたり30分、初回のみ50分)内容、その講座内容に沿ったパワーポイント資料は昨年度中完成させている。更に講座実施に協力してもらうファシリテーターのための詳しいマニュアルも完成した。また、今年度は講座実施時に使用するパワーポイントに組み入れたビデオ資料も制作した。 昨年度のface to faceでのフォーカスグループの実施が困難であったという事態を踏まえ、今年度はオンラインによるフォーカスグループの実施を試みた。困難な状況の中、ようやく参加者を集め、全2回の実施で自記式質問紙によるデータ収集をした。ところが、2回とも質問紙の収集においてパソコン上での不具合が生じ、データを得ることができなくなってしまった。このようなミスが生じたが、参加保護者の講座内容に対する評価は、別紙自由記述で求めており、講座に対する満足度や要望などを忌憚なき意見として知ることはできた。講座運営の実施者としての感触も含め、研究分担者と何度も協議を重ね、いったん完成させたプログラム内容の改善をさらに推進したため、講座の有効性や完成度は高まっているとは考えられる。 また、さらに研究協力者である保護者を集めるための手立てもさまざまに尽くした。単発の1時間程度の保護者支援の講座を小中学校において実施したり、研究分担者の関わりのある地域において教育委員会の支援を受け該当地域の小中学校に大々的に参加者募集のチラシを配布したり、養成したファシリテーターの支援も受けながら、講座実施のための参加者募集に努めてきた。しかしながら、データ分析上において必要とされる充分な実施回数や研究協力者の数を中々確保できない結果となってしまっている。量的なデータの収集に困難を生じていることが、質的なデータ分析の遅れにもつながり当初の研究計画時期とのずれとなってしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
プログラム自体の効果だけではなく、汎用性のあるものであるかどうかは、できる限り多くの地域で講座を運営し、終了後にデータを習得する必要があると考えられる。その為には、マインドフルネスを用いた保護者支援プログラムの有効性をさまざまな場面、場所において広報し、「ぜひ受講してみたい」と興味を持ってもらうことが必要であると考えられる。また、効果研究の過程で、特に神経発達的に不利な状態に置かれた思春期の子どもの特性を知ってもらうこと、青少年の健全な心の発達のためには、良質な親子関係を気付く必要があることをできるだけ多くの親に知ってもらいたいという願いもある。 にもかかわらず、研究参加者募集をチラシをまいたり知人に声をかけるなどの従来の方法では多大な労力をかけても難しいことが明らかとなった。プログラム参加を可能にするための方法についてはさらに考慮し続けていく必要がある。しかし、対面形式、オンライン形式、対面とオンラインの混合の形式で実施するなど、さまざまな形で講座の提供はなされている。それぞれの利点や効果についても量的なデータのみならず、インタビューを用い質的な分析を行い、検討を重ねて行きたいと考えている。 同様にファシリテーターの養成を通して当該プログラムを広めていく方法をとっているが、現に参加してもらった心理や教育の専門家からは保護者支援のためのツールとしてのプログラムの有益性は認められている。ところが実際にファシリテーター自らがプログラムを実施してみようとまでの意欲は持てない現状も窺えた。ファシリテーター養成講座を今後も継続しながらも、実際の講座運営にあたって懸念される事項や問題点などを検討し、さらに講座実施者への協力体制の構築も考えていく必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者及び研究代表者の地域での対面やオンラインで「マインドフルネス子育て支援講座」を数多く実施し、効果研究を重ねる予定であった。量的なデータ分析だけではなく、参加保護者からの感想や意見も集め、講座を改良を重ね、講座内容を確定するつもりであった。しかしながら、研究参加者の保護者を集めることが難しかったため、予定していた講座を開くことができなかった。また、講座内容の確定が遅れたため、保護者に供するためのオンデマンドの資料の作成が遅れている。その為、オンデマンドの資料作成の費用が今年度までに計上できなかったことが次年度使用額が生じた理由となっている。
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