うつ病は現在社会を悩ます深刻な病気の一つである。そして現在のうつ病の診断や評価は、抑うつ尺度を用いて計測することによって行われる。では一般人口において、抑うつ尺度のスコアはどのような数理学的な分布を呈するのだろうか? 意外なことに先行研究はほとんどなかった。我々は大規模なサンプルサイズのデータを用いれば、一般人口における抑うつ評価尺度の項目反応や総スコアの分布に何らかの特徴的な数理パターンが見出せるのではないかと仮説を立て、研究を開始した。 日米欧の一般人口のデータを用いて抑うつ評価尺度(K6)の分布を解析したところ、いずれのデータにおいても抑うつスコアの分布には共通するパターンが存在することが明らかになった。具体的には、最少スコア部分を除いて指数分布に従うことを報告した。 さらに抑うつ症状と不安症状が同じ分布モデルに従うことを明らかにした。以前よりうつ病は不安障害と合併しやすいことが以前から知られていた。我々は抑うつ症状と不安症状が同じ数理パターンの分布を示すのではないかと仮説を基に、米国の大規模疫学調査のデータを用いてこの仮説を検証した。うつ病の評価尺度であるPHQ-8と全般性不安障害の評価尺度であるGAD-7の症状の分布を調べたところ、いずれの症状でも同じ数理パターンを示すことが明らかになった。 研究自体全体を通じて、こういった分布の数理パターンが発生するメカニズムについて研究を進めた。また他の様々な対象のデータを分析することによって、現象の再現性を確認した。
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