研究実績の概要 |
MMPI-3日本版における偽装的な受検態度を検出する妥当性尺度が有効に機能するか検討する。良く見せようとする受検態度(Under-Reporting: UR)で受検した101名(男38,女63),悪く見せようとする受検態度(Over-Reporting: OR)の101名(男34,女67),年齢は18から33歳(中央値と最頻値は共に20歳),さらに,標準の教示下で受検した健常群(1236名)と臨床群(284名)として,MMPI-3日本版の標準化集団を利用した。 その結果,標準の教示下で回答した健常群や臨床群と比べると,悪く見せかけようとした群ではOver-Reportingを検出する尺度(F, Fp, Fs, FBS, RBS)のTスコアが上昇しており,良く見せようとした群ではUnder-Reportingを検出する尺度(L, K)のTスコアが上昇しており,これらの妥当性尺度が機能することが明らかになった。 臨床尺度の高次(HO)尺度,再構成臨床(RC)尺度,特定領域の問題(SP)尺度,パーソナリティ精神病理5(PSY-5)尺度におけるTスコアは,OR群はいずれも70前後と上昇しており,自分の持つ問題を過剰に報告することで悪く見せようとしていることが分かる。 UR群では逆にTスコアは50より低くなっているが,自信過剰(SFI)の平均Tスコアが70とかなり高く,支配性(DOM)の平均Tスコアが57,攻撃傾向(AGGR)が54とやや高くなっているのが特徴的である。自分の文化の価値観に照らして良く見せかける受検態度での回答がなされる。したがって,人より自信があり有能であると自分を評価し,他者を支配下においてリーダーシップをとるするような特性が望ましいとする価値観が大学生の中にあることが分かる。 また,ディープラーニング用のソフトは作製途中であり,上記の受検態度が検出可能か検討中である。
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