研究課題
本研究の目的は、無精子症と診断された患者夫婦を対象として個々人のディストレス、夫婦関係の改善と今後のライフコース選択の葛藤軽減のための国際標準となる心理カウンセリングを開発し、その効果評価を行うことである。計画通り、1年目で国際ガイドラインに基づいた心理カウンセリングを開発した。その後3年目までにRCTを実施する計画だったが、国が不妊治療を保険適用にしたため本研究でRCTで割付し介入することが不可能になったため、コホート研究デザインに変更して実施した。3年目で研究論文を執筆し発表することができた(小泉ほか、日本生殖心理学会誌2023;9(1):38-45)。心理カウンセリングの効果の指標を顕微鏡下精巣内精子採取術日から精子提供実施施設への紹介状作成日とした。コックス比例ハザードモデルを用いて、男性患者の染色体検査結果、パートナーの年齢、初診までの不妊期間を統制した上で、心理カウンセリングは紹介状作成率に影響するか検討したところ、心理カウンセリングのみが有意な影響を示した(ハザード比2.931;95%CI,1.271-6.758)。男性患者の染色体検査結果、パートナーの年齢、初診までの不妊期間が同じとき、心理カウンセリングを受けた夫婦はこの後に紹介状を作成する割合は2.931倍であった。精子獲得できなかった場合に心理カウンセリングを提供することは、夫婦の血のつながりのある子どもを持てない悲しみのケアと今後のライフコース選択について夫婦で取り組む機会となり次のライフコース選択を促進する効果が認められた。上記論文の検定力分析でサンプルサイズを10人程度追加する必要がわかった。4年目はサンプルサイズを追加して再検討し、英文論文執筆をする予定である。また、上記論文を基にした国際学会での発表が採択されたのでヨーロッパひと生殖学会ESHREで口頭発表を予定している。
1: 当初の計画以上に進展している
1年目の心理カウンセリング開発では、研究分担者、研究協力者の指導があり、スムーズに進んできた。効果評価研究では、おもいがけず該当患者数が多くなり、当初の計画以上の速さで調査を実施することができ、論文発表まで達成できたほど進展した。もしかしたら不妊治療の保険適用化で患者数増加が背景にあったのかもしれない。
最終年度である4年目は、サンプルを追加して再検討し、英文論文執筆をする予定である。また、上記論文を基にした国際学会での発表が採択されたのでヨーロッパひと生殖学会ESHREで口頭発表を予定している。この研究課題をもとにこの心理カウンセリングの普及、女性不妊症の場合の心理カウンセリングの開発など発展させていきたいと考えている。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
日本生殖心理学会誌
巻: 9(1) ページ: 38-45
Journal of Reproductive Psychology
巻: 9(1) ページ: 27-37
巻: 9(2) ページ: 22-28
巻: 9(1) ページ: 46-54
巻: 9(1) ページ: 20-26
精神科治療学
巻: 38(12) ページ: 1425-1430
周産期医学
巻: 53(12) ページ: 1741-1744
Cancer
巻: 129(16) ページ: 2568-2580
10.1002/cncr.34796