人間の聴覚系にとって,高次の認知的処理は欠かせない存在である.しかしながら,人間のピッチ知覚メカニズムの解明を目指す研究は,聴覚末梢系で抽出された周期情報をもとにほとんどを説明しようとしており,より高次の情報処理過程については考慮していないことが多い.既存の聴覚モデルでは考慮されていなかった高次レベルでの処理を反映したピッチ知覚モデルの構築が可能となり,末梢レベルから知覚に至るまでの人間のピッチ知覚メカニズム解明に新展開をもたらすことができる.これによって聴覚末梢系において抽出された周期情報だけでは説明できなかった様々な知覚現象を新たに検証できるようになる可能性も広がる.
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