研究課題/領域番号 |
21K03127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 幸生 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定研究員 (90599987)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 視覚統計学習 / 時間知覚 / 空間認知 / 意識 / 無意識 / 物体認知 / 実験心理学 |
研究実績の概要 |
本研究では,統計的規則性の学習という観点から,エピソード記憶の形成で重要となる時間と場所の認知メカニズムおよびその神経基盤を解明することを目指している。2023年度は,昨年度に引き続き物体が呈示される時間および場所に規則性が存在する場合に,これらの情報に基づいて規則性を学習できるか否かを検討した。 実験では,参加者は3つの物体の呈示順序,呈示時間,出現場所が常に一定であるトリプレット刺激列を観察した。その後のテストでは,参加者は直前に観察していた刺激列に出現したトリプレットと刺激列としては出現しなかったフォイルを弁別する強制選択課題に取り組んだ。また,学習の際の規則性への気づきの有無とテスト課題における確信度評定を用いて,物体の時間や場所の規則性に対する意識を測定した。 実験の結果,規則性を持たないフォイルと比較して,物体の呈示時間および場所に規則性があるトリプレット,物体の場所のみに規則性があるトリプレット,物体の呈示時間のみに規則性があるトリプレットいずれも選択される割合が高いことが示された。さらに,物体の呈示時間のみに規則性があるトリプレットと比較して,物体の場所に規則性があるトリプレットの方が選択される割合が高い傾向が見られた。しかしながら,テスト時におけるこれらの情報の組み合わせを変えると学習効果および規則性に対する意識に違いが見られた。これらの結果は,人間は物体の時間や場所の情報に基づいて規則性を抽出・学習し,視覚場面の物体を認識している可能性を示唆している。 今年度は,Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognitionにて研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き3年目も行動実験を実施したために,行動実験の研究は順調に進んでいる。しかしながら,計画していた視覚統計学習の神経基盤を検討する実験は実施できなかった。そのため,2023年度は次年度にfMRI実験を実施するための準備を整えることに努めた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は3年目までに得られた行動実験の結果を基に,時間と場所の情報に基づく規則性の学習を支える神経基盤を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動実験の実施期間が当初の予定よりも延長したために,2023年度に予定していたfMRI実験を実施することができなかった。そのため,今年度はMRI装置の利用料金等を支出しなかった。また,その他の研究業務により,当初参加予定であった国内学会および国際学会に参加しなかったために,旅費を支出しなかった。これらの理由により,次年度使用額が生じた。 2024年度は,MRI実験を実施するために必要な費用,MRI実験の結果を分析する際に使用するPCの購入,研究成果の発表に必要な費用に使用する計画である。
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