研究課題/領域番号 |
21K03133
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 健太郎 九州大学, 人間環境学研究院, 講師 (30727087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間認知 / 持続時間判断 / 感覚統合 / 多感覚情報 |
研究実績の概要 |
感覚情報統合に基づく時間認知の仕組みを明らかにするという目的のもと,当年度は主に以下の内容について検討および活動を行った。 (1)時間知覚に関する先行研究の知見を整理し,既存の実験パラダイムや情報処理モデルにおける問題点・限界点と,今後の研究で求められる展開・課題について考察を行った。またその内容について,「時間知覚研究の信頼性-限界と展望-」という演題で招待講演を行った。 (2)視聴覚間の持続時間知覚の相互作用について,文献の整理を行った。また視覚刺激の持続時間判断における内言的手がかりの影響について,オンライン上で実験を実施するための準備を行った。 (3)時間的オッドボールパラダイムを用いて,視覚的持続時間の認識におけるトップダウン情報とボトムアップ情報の寄与を検討した。実験の結果,先行刺激として提示された顔と異なるカテゴリの顔が刺激系列の最後に提示された場合,同じカテゴリの顔が提示された場合と比べて持続時間の伸長効果が大きくなった。また顔スクランブル刺激を用いた統制実験の結果,この効果の違いは低次の視覚特徴の違いでは十分に説明できないことが示唆された。この結果から,ボトムアップ情報よりもトップダウン情報の方が時間的オッドボール効果により大きく寄与することが示唆された。この成果について日本心理学会第85回大会で発表を行い,学術大会優秀発表賞を受賞した。 (4)多感覚情報の認知過程という観点から,運動感覚や視聴覚統合を専門とする2名の研究者を招いて研究会を開催し,公開の場で議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から,予定していた実験室実験が一部実施できなかった。そのため進捗状況はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き実験室実験を進めるとともに,オンライン実施が可能な内容についてはオンライン実験へ切り替えて実施する。得られた成果については学会や研究会で発表を行い,並行して論文作成を進め学術誌に投稿するなど,成果の公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,実験室実験が一部実施出来ず,実験設備費および実験参加者謝金として計上していた予算に残額が生じた。また国内外の学会や研究打ち合わせがオンライン開催となり,旅費として計上していた予算にも大幅な残額が生じた。 (使用計画)実験室実験の一部をオンライン実験に移行し,オンライン実験プラットフォームの利用および参加者のリクルートに掛かる費用として使用することを予定している。また旅費の一部は他の費目での利用を検討している。
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