研究課題/領域番号 |
21K03141
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邉 慶 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00772740)
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研究分担者 |
番 浩志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (00467391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デフォルトモードネットワーク / ニホンザル / fMRI計測 / 高次認知機能 |
研究実績の概要 |
デフォルトモードネットワーク(DMN)は,安静時に大きな活動を示す領域,逆に言えば,タスク時に活動が減少する脳領域である。DMNは極めて重要な機能を担うと考えられているが,その詳細は未解明である。本研究計画は、 (1)プラスチックマスクを用いた完全非侵襲のサルfMRI計測法を確立する.(2)覚醒安静時とタスク時のサル脳fMRI計測を行いDMNコア領域を同定する。(3)各コア の,安静時とタスク時のニューロン活動・局所フィールド電位を解析し,コア間の活動特性の差異,コア間活動相関の周波数ごとの特徴(θ, α, β, γ)を明らかにすることで、DMN機能をボトムアップで解明することを試みるものである.今年度は,(1)の独自の頭部固定法を用いた完全非侵襲サルfMRI計測法を確立に成功した.具体的には,合計3頭のサルにおいて,プラスチックマスク頭部固定による完全非侵襲fMRI計測を行い,fMRIデータ取得が可能であることを示した.本手法は,事前の手術など,侵襲的な技術を全く必要としないことから,覚醒行動中のサルを用いた脳イメージング研究のハードルを著しく下げると考えられる.今年度は,上記に加えて,1頭のサルで,fMRIによるサルDMN領域の探索を開始した. 現在,脳活動に由来する血液酸素飽和度の変動(BOLD信号)を分析し,どの脳部位で安静時に高い活動が見られるのか(安静>タスク領域)を解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,デフォルトモードネットワーク(DMN)の生物学的基盤をボトムアップ的に解明する過程の第一歩として,将来的にニューロン活動レベルの解析が可能で,ヒトに進化的に近縁なニホンザルでfMRI計測を可能にすることを当初の目標としていた. 現在までの研究により,覚醒行動中のニホンザルを完全に非侵襲な状態でfMRI計測することが可能になった.先行研究では,サルfMRI計測には,頭部固定用のインプラントを事前に外科的に埋め込むことが必須とされていたが,今年度の研究により,そのような処置をすることなく,先行研究と同等,あるいはそれ以上のクオリティーのfMRIデータが取得可能であることを示した.今年度の研究成果をもとに,2つの国際学会において発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
研究はこれまで順調に進捗しているので、次年度以降もこれまでのデータ収集と解析を引き続き行う。また、実験に用いる被験体(サル)を新たに2頭追加するべく,動物の訓練を行う.従って,次年度は,合計3頭のサルを用いて,fMRIによるデフォルトモードネットワークの同定を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,コロナ禍のため予定していた海外学会(北米神経科学大会)への参加を行わなかった.そのため,計上していた旅費を使用しなかった.次年度は,学会参加の回数を増やすことで対応する.
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