研究課題
本研究は、超音波でなされるマウスの求愛発声に表現される情動状態と、特定の神経活動との関係を対応づけることを目的として行われた。特に我々は、動機づけを制御するドーパミン神経系に着目していた。つまり、雌と出会った際に多くの発声を示す雄個体はドーパミン神経の活性化によって性的動機づけが高まっており、この内的状態が発声として表出されていると仮説立てていた。また、発声の頻度の高さのみならず、性的動機づけが高い個体の超音波発声には、音響特性としても情動状態が表出されているだろうとも予想していた。ドーパミン神経の活性が高まることで、特徴的な声が発せられると想定したわけである。そこで本研究で具体的に行おうとしたことが、以下の(1)-(3)の3点である。主にC57BL/6J(B6)系統を用いて実験を行った。(1)ファイバーフォトメトリーによる発声中の雄マウスのドーパミン神経における神経活動イメージング:残念ながら、仮説検証が可能な計測をすることができなかった。原因はまだ特定出来ていない。(2)神経活動操作による発声の制御:ドーパミン神経の活性化を光遺伝学によって抑制すると、発声が減少することをリアルタイムに観察することを目的に行った。しかし、(1)同様に上手く実験系を立ち上げられなかった。(3)音響特徴の自動解析と神経活動の関係:性的動機づけが高まっている際には、声が「盛り上がり」を見せると想定し、そのような音響特徴を定量できる方法を開発した。声の抑揚の強さを周波数の変動係数として定量するcvfreqという指標を定めた(Lan et al., 2023 業績参照)。また、ドーパミン神経が活性化している際にcvfreqで定量される抑揚も強くなると考えていたが、(1)が達成されなかったため、この検証を行うことはできなかった。
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