研究課題/領域番号 |
21K03149
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
金城 光 明治学院大学, 心理学部, 教授 (00327298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 文章理解 / 否定 / 二重否定 / 高齢者 / ワーキングメモリ / 質問紙 / オンライン実験 |
研究実績の概要 |
2022年度は主に次の2点について研究を進めた。 I.否定を含む命題の真偽判断傾向の特性と関連要因の探索のためのオンライン実験 論理構造は同じであるが命題の表現形式が異なる3つの真偽判断課題を用いて、否定を伴う命題の真偽判断の反応傾向を反応時間と正答率を指標に若者20名を対象に実験を行った。結果、3つの課題で反応傾向は同じであり論理判断傾向の頑健性が確認された。すなわち、否定を伴う命題の真偽判断は肯定の判断よりも正答率が低く、訓練によって全体としての反応時間は速くなったが、否定条件は反応に時間がかかり、この傾向は10回の訓練でも変化しなかった。3つの真偽判断課題の正答率とWMの関連を調べるため、3種類のWM課題(ひらがな課題、N-back課題、手の心的回転課題)の成績との相関分析を行った。ひらがな課題は他の課題に比べて処理の負荷が低くなるように設計しているが、ひらがな課題よりも、言語的なN-back課題と非言語的な手の心的回転課題との相関が高いことから、否定を含む真偽判断では言語のみに依存しない認知処理が関連する可能性が示唆された。実験2として、教示を正確さ重視に変更した実験を実施し現在分析中である。 II. 高齢者を対象とした否定文の難しさに関する質問紙調査 都内在住の70-80代の高齢者754名を対象に単文を肯定文と否定文として表示した場合の回答の矛盾率と回答の難しさについて調査を実施した(有効回答率55%)。結果から、約2割が否定の文章になると本来の回答にたどり着いていない可能性があること、また、肯定文は答えやすいと感じている人が全体の7割強だった。さらに、否定を含む文章で困った経験について自由記述で回答を求めたところ、自治体の広報紙、医療機関の説明文書や問診票で困った経験や、具体的な事例は思い出せないが、経験したことがあるという記述が認められ、詳細について分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度もコロナ禍で高齢群と若者群を対象とした眼球運動測定を伴う実験室実験が難しかったため。他方、オンライン実験により若者を対象にした否定を伴う真偽判断の訓練効果について新たな方向から研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、高齢者における否定文の理解力と関連要因を調べることが目的である。これをふまえ、2023年度は以下3点を実現したい。1)真偽が明確な否定を含む論理判断の正確性と反応時間の傾向とその訓練効果について若者と高齢者を比較する。まずは、2022年度に若者を対象に実施した2つのオンライン実験結果をもとに否定を含む論理判断の正確性と反応時間の反応傾向、それら反応傾向とWM課題成績との関連、反応傾向の訓練効果について整理し、論文化する。その上で、この反応傾向や訓練効果に年齢差があるのかについて調べるため、高齢者を対象に同様のオンライン実験を実施する。オンライン実験のため、クラウドソーシングを用いてインターネットで参加できる高齢者世代60代を対象とした実験を実施する予定である。2)従来のモデル(Clark & Chase, 1972)では、否定を含む論理判断では認知プロセスが加算的に経時的に処理されている可能性が示唆されている。1)の実験結果をもとに論理判断時の認知プロセスを計算し、従来のモデルとの比較、および若者と高齢者の処理過程の比較を行う。3)若者と高齢者を対象にした実験室実験を行い、真偽が明確な否定を含む論理判断課題遂行時の眼球運動を測定し、高齢者の課題処理の特性を複数の行動指標と生理指標から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた実験室実験が進まなかったため。
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