研究課題/領域番号 |
21K03154
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
飛田 明彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50272274)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 有限群の表現論 / 有限群のコホモロジー / 有限群の共役類 / 有限群の既約指標 |
研究実績の概要 |
本研究の対象は、有限群とその表現論に関わる種々の構造である。群論的な面からは、有限群とその部分群の構造や共役関係、位相幾何的な面からは、分類空間のホモトピー論やコホモロジー、これらの研究対象について、表現論との関連を通じて探求を行う。表現論の手法を主とするが、Burnside 環、両側 Burnside 多元環の理論、両側集合圏、両側集合関手の理論の応用も図る。有限群の表現については、通常表現とモジュラー表現の両方の観点から研究を進める必要がある。通常表現においては、既約指標の性質と群構造との関係について、モジュラー表現においては、既約加群や加群圏の性質、ブロック多元環の構造に加えて、有限次元多元環の表現論の観点からの考察も行なう。 群のコホモロジーに加えてブロック多元環のコホモロジーを考察するためには、Hochschild コホモロジーの考察が必要となる。Hochschild コホモロジーは群の共役類(代表元の中心化群の Hochschild コホモロジー)による加法的分解を持ち、共役類との関係が重要である。一方、多元環上の加群のコホモロジーの考察のためには射影加群と射影分解の考察が必要となる。射影加群における既約加群の組成因子としての重複度(射影加群間の準同型写像空間の次元)を表示するカルタン行列は特に重要な情報である。ブロック多元環においては、カルタン行列の単因子はブロックに分配された正則共役類の不足数と対応しているため、この点からも加群と共役類との関係は重要な情報である。 本年度の研究では、昨年度に引き続きブロック多元環上の既約加群と共役類との関係についての研究を進めることができた。また、既約指標と共役類の関係について、指標の次数と共役類の大きさとの整除関係を持つ全単射が存在する群について調べ、環積や metacyclic 群に関する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は有限群に関わる種々の構造の研究を目的としているが、本年度は有限群の表現論と構造に関する研究を推進した。 モジュラー表現において、有限群の群多元環はブロック多元環の直積に分解されるため、ブロック多元環に属する指標や表現、不足群などブロック多元環に付随する対象に関する研究を行うことが必要となる。これまでの研究においては、ブロック多元環の既約加群とブロックに分配された正則共役類と下位不足群の対応に着目した考察を行ってきており、既約加群の vertex の位数と下位不足群の位数やブロック多元環のカルタン行列式との関係についての不等式を得ている。特に、主ブロック型のブロック多元環や可解群のブロック多元環の場合については詳しい状況を調べてきた。今年度も、引き続きこれらの対象についての解析を行っており、可解群のブロックについてはさらに詳しい状況を考察した。 通常既約指標についても、これまでの研究においては、既約指標の次数と共役類の大きさに着目して研究を行ってきた。ブロックのカルタン行列式、不足群の焦点部分群、既約指標の不足数和と共役類の不足数和、等に関連した不等式を考察してきており、本年度もこれらの対象について引き続き研究を進めることができた。冪零群や可解群の考察においては、群の拡大や中心拡大の考察が重要となるが、今年度は群拡大と指標、共役類の関係に着目した研究が進展した。中でも、対称群の部分群による環積に関する結果が得られている。 2024年2月に実施されたRIMS 共同研究(公開型)「有限群のコホモロジー論とその周辺」において研究代表者を担当し、関連する様々な諸問題について多くの研究者と有意義な検討・議論を行い、情報を取集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き有限群の表現論と構造についての研究を推進する。正標数の体上の表現論と複素数体上の表現の両面からの研究を行うが、どちらもブロック理論との関係を念頭に研究を進める。併せて、両側 Burnside 多元環の表現とコホモロジー環への作用などコホモロジー論への応用に関する研究を進める。また群作用の軌道に関する研究を行い、群の拡大での共役類の状況について考察を行う。 今年度までの研究では有限群の表現、構造、コホモロジー等が主な対象であったが、今後はこれらに加えて、有限群の表現のみならず、有限次元多元環の表現論の観点からも研究を進める必要がある。そのために、多元環上の加群圏や安定圏、導来圏等の活用も視野に入れることが重要となり、これらの対象に関する情報収集と独自の研究を深めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者として実施した研究集会での協力者の旅費等経費を予定していたが、当該研究所より多くの支給があったため必要額がなくなり次年度使用額が生じた。使用計画については、図書や文献資料の購入により情報収集に努めるとともに、次回も同趣旨の研究集会を実施するために使用していく予定である。
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