研究課題/領域番号 |
21K03156
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 真人 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (10714082)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カラビ・ヤウ多様体 / 幾何転移 / コニフォルド転移 / トーリック多様体 / ミラー対称性 |
研究実績の概要 |
カラビ・ヤウ多様体の分布に関して重要な手がかりを得ることができた。この成果の一部については城崎代数幾何学シンポジウムのオンライン講演および数学会で発表し、報告集の原稿を公表した。現在さらに2本の論文を執筆中である。 具体的には、研究実施計画に従い(トーリック多様体の)カラビ・ヤウ超曲面というクラスにおいて、幾何転移と呼ばれる操作を詳細に調べた。この操作をより基本的な操作に分解することで、森理論との密接な関係が明確になってきた。 森理論においては、代数多様体に対して極小モデルプログラムを走らせることで、極小モデルか森ファイバー空間のどちらかが出力されることが期待されている。双有理同値な極小モデルはフロップと呼ばれる操作で互いに関係しており、双有理同値な森ファイバー空間はサルキソフ・リンクと呼ばれる操作で互いに関係している。カラビ・ヤウ多様体は極小モデルであるが、幾何転移により結びついた分布の実態は、むしろ後者と似た状況になっていそうである。つまり、カラビ・ヤウ多様体に対して原始的な幾何転移を繰り返していくと、原始的なファイバー空間が出力されると予想する。さらに、これらが幾何転移で結びつくならば、サルキソフ・リンクに類似した基本的な幾何転移のリンクによって互いに関係することも予想する。いずれもまだまだ検証が必要な予想であるが、カラビ・ヤウ超曲面の場合には具体的な多面体の問題に帰着できる。中でも「ほとんど擬反射的」と呼ばれる多面体が包含関係を通じて結びついているかどうかという問題が、リードの空想と呼ばれる大予想の特別な場合に相当する重要な問題となった。 今後の研究においては、この多面体の問題や上記二つのカラビ・ヤウ多様体に対する予想に取り組みつつ、カラビ・ヤウ多様体の分布の実態をさらに深く調べ、研究の目的である半オイラー数の偏りの理由を何とかして突き止めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の公表には至っていないが、カラビ・ヤウ多様体の幾何転移と森理論との関係が明確になってきた。これにより、リードの空想やミラー構成に対する新しいアプローチが可能になった。また、多面体の大域連結性という興味深い組み合わせ論の問題も提起することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた成果を論文にまとめて公表する。研究実績の概要で述べた多面体の問題やカラビ・ヤウ多様体に対する予想に取り組みつつ、カラビ・ヤウ多様体の分布の実態をさらに深く調べ、本研究の目的である半オイラー数の偏りの理由を突き止めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の初期段階にあって成果を発表するための出張や招聘などの費用が生じなかったため。翌年度はそれらの費用に加え、物品(コンピュータや書籍)の購入にも使用する予定である。
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