研究課題/領域番号 |
21K03160
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山浦 浩太 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (60633245)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 岩永-Gorenstein環 / Cohen-Macaulay加群 / 安定圏 / 三角圏 / 準傾対象 |
研究実績の概要 |
入射次元が1以下の正次数付き有限次元代数を、正次数付き1次元岩永-Gorenstein代数と呼ぶ。この代数の研究対象の一つは、次数付きCohen-Macaulay加群の圏、およびその安定圏である。安定圏は三角圏の構造を持つため、三角圏の道具を用いた研究が可能である。先行研究において、正次数付き1次元岩永-Gorenstein代数の0次部分環が大域次元有限であるとき、次数付きCohen-Macaulay加群の安定圏は準傾対象を持つことが示されている。これを受けて本研究では、準傾対象のなす集合を調べ、それを安定圏の構造研究に応用することを試みる。今年度は次の設定において研究を行った。Aを大域次元有限な有限次元代数、Cをその両側加群とし、RをAとCの自明拡大代数とする。Rが1次元岩永-Gorenstein代数であると仮定する。この設定では次数付きCohen-Macaulay R加群の安定圏はA加群の導来圏の許容部分圏と同一視でき、安定圏の準傾対象は導来圏の準傾対象の直和因子であることが知られている。従って、導来圏の準傾対象のなす集合の性質が、安定圏のそれに遺伝していることが期待される。そこでA加群の導来圏の準傾対象の集合が離散的であるとき、次数付きCohen-Macaulay R加群の安定圏の準傾斜対象の集合も離散的であるかどうかを考察した。具体的には安定圏の2つの準傾対象を順序を保ったまま導来圏の準傾対象に持ち上げられるかという問題や、安定圏と導来圏それぞれにおける準傾斜対象の変異の関係の記述について調べた。これらについて結論が出なかったため、次年度もこの事項の検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予想していることに対して、一般論を構築するか、または反例も見つけることによる解答を与えられておらず、研究の進度は遅れている状況にある。コロナウイルス感染症流行のために研究者同士が顔を合わせて交流をする機会が減っており、様々な立場の研究者と意見交換が容易にできないことは研究が停滞している一因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究実績の概要で述べた問題を具体的な設定において調べる。まず、Aを導来圏が離散的である有限次元代数とする。このような代数は箙と関係式が決定されているため、容易に構成できる。また、加群の導来圏について、準傾対象の集合は離散的であることが知られている。そこでAの自明拡大環として構成される1次元岩永-Gorenstein代数Rを考え、次数付きCohen-Macaulay R加群の安定圏の準傾対象の集合が離散的であるかどうかを検証する。導来圏が離散的である代数に対しては、その加群の導来圏のAuslander-Reiten箙の決定や、濃密部分圏の分類がなされている。それらの結果を用いることで検証はスムーズに進むと思われる。このような具体例を詳細に見ながら、初年度に考察した問題を引き続き調べていきたい。また当初の計画通り、準傾対象と安定圏のt構造との対応についても研究を開始する。それも上記で述べた例の観察から始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行のため、計画されていた研究集会が中止、またはオンラインとなり、それらに参加するための出張費用を使用することがなかった。そのため、次年度使用額が生じた。今年度も同様の状況である可能性が高いので、研究集会への参加や研究打ち合わせへの使用を念頭に置いたマイク、カメラなどの電子機器の購入に次年度使用額を当てることを検討する。
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