研究課題/領域番号 |
21K03163
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有木 進 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 名誉教授 (40212641)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 表現型 / 円分箙ヘッケ代数 / シューア有限性 / タウ傾有限性 / 分解係数 |
研究実績の概要 |
Adachi-Iyama-Reitenの導入したタウ傾理論の発展は著しい。有限表現型ならばタウ傾有限性をもつが、逆は正しくない。そのため与えられた代数がタウ傾有限性をもつかどうかは有限表現型かどうかの判定と同様にタウ傾理論における基本的な問題である。代数閉体上の有限次元代数の加群は、自己準同型環が1次元になるときシューア加群と呼ばれる。シューア加群の同型類の個数の有限性をシューア有限性と呼ぶ。シューア有限性とタウ傾有限性が同値であるため、タウ傾有限性を調べるにはシューア有限性を調べればよいが、表現型と違って、シューア有限性は誘導関手や制限関手で不規則に変化し、うまく制御できない。そこで、SpeyerおよびLyleとの共同研究において誘導関手・制限関手の代わりに分解係数に関する種々の定理を用いてヘッケ代数のシューア有限性を制御することを試み成功した。対称群のヘッケ代数に対してはシューア有限性と有限表現型になることが同値になることがわかり、論文を出版した。他方で、アフィンA型円分箙ヘッケ代数は対称群のヘッケ代数の複素鏡映群のヘッケ代数への一般化であり、研究代表者以外にもイギリスやオーストラリアの研究者を中心に研究されてきたが、このヘッケ代数のブロック代数の表現型の決定は長い間の懸案であった。表現型は誘導関手・制限関手を用いて決定可能とはいえ、帰納法を成立させるためには、どのように誘導関手を適用すれば暴表現型が保たれるかがわからないと実際には表現型の決定が難しい。これが長年の懸案だった理由である。今年度のもうひとつの大きな成果として、帰納法を機能させるための有向グラフを導入し、この有向グラフに沿って帰納法を機能させることで表現型の決定問題を完全に解決した。この成果は王起および宋林亮との共同研究であり、論文も出版済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に述べた分解係数の研究については当該論文を解読中であり、いくつかのアイデアを得て新しい分解係数の決定を目標としているが、他方で今回分解係数に関する種々の定理の応用として対称群のヘッケ代数のシューア有限性を決定できたことは大きな成果である。また、対称群のヘッケ代数とは異なり、アフィンA型円分箙ヘッケ代数には順表現型のブロック代数が多く存在する。王起および宋林亮との共同研究では基礎体の標数が2と異なるという仮定のもとで順表現型ブロック代数がすべてブラウアーグラフ代数になることも示すことができている。この順表現型ブロック代数のなすクラスはブラウアーグラフ代数の理論が分解係数の決定問題への大きな手掛かりを与えているので、将来的に具体的な研究成果が期待できる。以上の理由から研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に書いた論文の解読を進めるとともに、より代数的な理論に書き換えることを目標とする。また、C型円分箙ヘッケ代数のブロック代数もセルラー代数であるから、C型やそれ以外のアフィンリー型の円分箙ヘッケ代数の研究も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はオンラインでの研究集会参加がまだ多く、オンサイトで参加した研究集会は旅費のみ科研費負担で滞在費が先方負担になったため。また、2024年4月に参加する沖縄科学技術大学院大学の研究集会と5月の熊本で参加する研究集会は年度をまたぐ形となった。11月には沖縄科学技術大学院大学に滞在し、12月にソウル大学で開催する研究集会に組織委員として参加するなど、2024年度は多くの旅費が必要となる予定である。
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