研究実績の概要 |
以下では, Xをn次元非特異複素射影多様体, KをXの標準因子, LをX上の豊富な因子とする. さらに, K+tLの大域切断のなす次元をf(t)とおく. このときf(t)はtに関する多項式となることに注意する. 3つある本研究目的のうち, 令和3年度は特に以下の(課題1)と(課題2)について研究を進めた: (課題1) nが5以上の整数のとき, K+(n-1)LがnefならK+(n-1)Lの大域切断のなす次元が正となるかについて調べる. (課題2) nが6以上の整数であり, かつLの大域切断のなす次元が正の時に以下の(予想)が正しいかどうかについて考察をする.(予想)n+1以上の任意の整数mに対して, K+mLの大域切断のなす次元が(m-1)!/{n!(m-1-n)!} 以上となる. さらに, n+1以上のある整数mで随伴束K+mLの大域切断のなす次元がちょうど(m-1)!/{n!(m-1-n)!}になるとき, Xはn次元射影空間となり, Lはその超平面となる. まず(課題2)に関しては, n=6の時に考察を行った. その際に仮定していることとして, Lが大域切断をもつ豊富な因子の場合を考えるが, n=6の場合には現時点ではその条件だけではうまくいかないことがわかった.特に, f(1)とf(2)とf(3)の値の様子が関数f(t)全体に影響を与えていることがわかった. また(課題1)については n=5の場合を考えているが, これもやはりf(1)とf(2)の値の様子がわかれば解決に向けて前進することがわかる. いずれにしても, tが小さいときのf(t)の値の様子がK+tLの大域切断のなす次元の値に影響を与えていることがわかり, 問題の困難性を改めて確認した形となった.
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今後の研究の推進方策 |
Xをn次元非特異複素射影多様体, LをX上の豊富な因子とする. さらに, K+tLの大域切断のなす次元をf(t)とおく. 今後の研究推進については, 上記の研究成果を踏まえて以下のことについて取り組んでいく.(課題1)については, n=5の場合にf(1)とf(2)の値の様子を考察する. その際に必要に応じてXが特別な射影多様体となる場合についても考察してみる.(課題2)については, n=6の場合について, Lが大域切断を持つという仮定以外に, f(1), f(2), f(3)の値の様子に関する条件を設定して考察を行う. さらにf(1), f(2), f(3)の値の様子に関する条件が一般に成り立つかについても考察する. その際に必要に応じてXが特別な射影多様体となる場合についても考察してみる. なお、本研究課題として設定していたものに以下の(課題3)がある:(課題3) nが4以上の整数でK+(n-2)Lがnefの時, K+(n-2)Lの大域切断のなす次元が正となるかを調べる. これについてもn=4の場合に引き続き考察を行っていく. 基本的に問題となるのはXの小平次元が-∞の場合であるので, Xが特別な射影多様体である場合を含めて, 多方面から考察を進めていきたい. さらに, 上記研究課題以外にも, 本研究課題に関連する話題が生じた場合にはそれについても研究して, 本研究課題との関連性も含めて考察をしてみる予定である.
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