研究実績の概要 |
以下では, Xをn次元非特異複素射影多様体, KをXの標準因子, LをX上の豊富な因子とする. 3つある本研究目的のうち, 令和4年度は特に以下の(課題1)と(課題3)について研究を進めた: (課題1) nが5以上の整数のとき, K+(n-1)LがnefならK+(n-1)Lの大域切断のなす次元が正となるかについて調べる.(課題3) nが4以上の整数でK+(n-2)Lがnefの時, K+(n-2)Lの大域切断のなす次元が正となるかを調べる. まず(課題3)に関しては, n=4の時に考察を行った. 現時点ではn=4の場合であってもK+2LがnefであるときにK+2Lの大域切断のなす次元が正であることを示すことは困難であるので、次のような問題を考えた. K+2Lがnefであるので, K+2Lの小平次元が0以上になることから, 十分大きな自然数mに対してはm(K+2L)は大域切断を持つことがわかる. そこで, まずはp(K+2L)が大域切断を持つ最小の自然数pについて考察することとした. もしこのpの値が1になることが示されれば, n=4の場合は解決される. 以前に示した結果を用いることでpの値は3以下であることはわかるが, これが2以下になることを現在考察中であり, いくつかの場合を除いて成り立つことを確認した. また(課題1)については n=5の場合を考えているが, これに関連する研究として以下について研究を行った. まずn=5の場合, K+4Lがnefであれば, 2以上の任意の自然数mに対して, m(K+4L)は大域切断を持つことを示した. さらに次のステップとして2(K+4L)の大域切断のなす次元の値が小さい場合の偏極多様体の分類に関する研究を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
Xをn次元非特異複素射影多様体, KをXの標準因子, LをX上の豊富な因子とする. さらに, K+tLの大域切断のなす次元の値をf(t)とおく.今後の研究推進については, 上記の研究成果を踏まえて以下のことについて取り組んでいく.(課題1)については, n=5の場合に2(K+4L)の大域切断のなす次元の値が小さい場合の偏極多様体の分類を完成させる. さらにこれらの分類結果から, 2(K+4L)の大域切断の次元の値が小さい偏極多様体(X,L)についてK+4Lの大域切断のなす次元が正であるかを確認する. (課題3)については, n=4のとき, 2(K+2L)の大域切断のなす次元が正となるかについて考察し, 2(K+2L)の大域切断のなす次元の値が小さいときの偏極多様体(X,L)の分類も行いたい. さらに以下の(課題2)の研究も行いたい. (課題2) nが6以上の整数であり, かつLの大域切断のなす次元が正の時に以下の(予想)が正しいかどうかについて考察をする.(予想)n+1以上の任意の整数mに対して, K+mLの大域切断のなす次元が(m-1)!/{n!(m-1-n)!} 以上となる. さらに, n+1以上のある整数mで随伴束K+mLの大域切断のなす次元がちょうど(m-1)!/{n!(m-1-n)!}になる時, Xはn次元射影空間となり, Lはその超平面となる. (課題2)については, n=6の場合について, Lが大域切断を持つという仮定以外に, f(1), f(2), f(3)の値の様子に関する条件を設定して考察を行う. さらにf(1), f(2), f(3)の値の様子に関する条件が一般に成り立つかについても考察する. 上記研究課題以外にも, 本研究課題に関連する話題が生じた場合にはそれについても研究し, 本研究課題との関連性も含めて考察をしてみる予定である.
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