研究課題/領域番号 |
21K03179
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三井 健太郎 神戸大学, 理学研究科, 助教 (70644889)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 代数多様体族 / トーサー / 主等質空間 / モデル / 代数群 / Galoisコホモロジー |
研究実績の概要 |
小平次元0の楕円曲面の特異ファイバーに関する研究について改良を重ね論文が受理された.一般に楕円曲面の小平次元は1以下である.基礎体の標数が0の場合や楕円曲面の小平次元が0以外のの場合については先行研究があり,有理楕円曲面や多重種数が小さい小平次元1の楕円曲面については,どのような特異ファイバーが現れるか知られていた.今回の研究では正標数体上の小平次元0の楕円曲面について類似の結果を得た.先行研究により,このような楕円曲面に現れる可能性のある多重ファイバーの組み合わせの表が与えられていた.対象となる全ての曲面を体系的に構成することで,表にある組み合わせのうちの一部は実際には存在しないことを示し,存在する場合は具体的構成方法を明らかにした.この非存在性については算術幾何を応用した別の方法でも証明し,その理論的背景も明らかにした.また同時に,準超楕円曲面に関する先行研究の誤りについても詳細な証明を与えて訂正し上記研究を完成させた. 正規整スキーム上の代数群の一般ファイバーは関数体上の代数群である.これまでの研究で,関数体上の代数群のトーサー(主等質空間)から正規整スキーム上の代数群が作用する対称性の高い幾何学的モデル(代数群作用を持つ代数多様体族)を構成した.このようなモデルの分類についての研究を進めることで,長らく正しいと信じられていたモデルの一意性に関する先行研究の誤りを訂正できることがわかったので,具体的に反例を構成し,その事実について執筆した.より具体的には,これまでの研究で,代数群がDedekindスキーム上固有な場合には上述のようなモデルが一意的に存在するが,底空間上固有でない場合にはモデルが存在したとしても一意的であるとは限らず,モデルの同型類はGaloisコホモロジーを用いて分類できることを示した.また,多くの線形代数群の場合にモデルが必ず存在することも示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一つの目標であった楕円曲面の特異ファイバーの分類だけでなく,その中で必要となる準超楕円曲面に関する先行研究の誤りについても詳細な証明を与えて訂正し研究を完成させることができた.また,トーサーのモデルの研究を進めることで,モデルの一意性に関する先行研究の誤りを発見し訂正できた.さらに,当初の予想を上回る多くの線形代数群のトーサーに対してモデルが必ず存在することも証明できた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,完備付値体上定義された半安定還元を持つアーベル多様体のネロンモデルに対し,Mumfordモデルを手掛かりに双有理幾何学的な意味で極小な相対コンパクト化を構成した.この相対コンパクト化はネロンモデルの加法作用が一意的に拡張可能であるという高い対称性を持っている.論文の共同執筆者である中村郁氏との研究打ち合わせ活発化させ結果を改良する予定である. 多様体の退化に関するモノドロミー判定法に関する研究も進める予定である.楕円曲線についてのこの判定法は良還元の場合や切断の存在する対数幾何的良還元の場合については既に知られており,これまでの研究で,一般の対数幾何的良還元の場合は閉点の次数やコホモロジー論的平坦性と関係していることを示した.残念ながら論文の共同執筆者が体調不良に陥り協力の得られない状況に至ってしまったが,共同執筆者の回復後も出張による研究打ち合わせが可能になるか不確実なためオンライン会議も活用して研究打ち合わせを活発化させ,改良し続けているプレプリントを完成させる予定である. また,モデルの不変量を求める方法を確立するため商特異点や商写像の分岐も研究する予定である.基礎体が正標数であっても低次元の場合は商特異点の研究を進めており,これまでの研究結果を応用すれば曲面の具体的商特異点解消について新種の例が得られると考えている.具体的には,商特異点の商が正則であるとき,その商の上で複数の商特異点のファイバー積を取ると,新種の特異点解消を持つ商特異点が得られると予想している.商に対応する不変式環や付随する不変量の計算は複雑であるが,電子計算機と数式処理ソフトを活用することで予想を立て,詳しい商特異点の構造も明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症流行のため予定していた研究協力者との研究打ち合わせが中止したり他業務が増加したため研究完成に想定以上の時間を要している.また,参加を予定していた研究集会の中止や延期により研究成果の発表を円滑に行えなかった.出張による研究打ち合わせや研究成果の発表が可能になるか不確実なため,オンラインによる研究や会議の環境を整え研究打ち合わせを活発化させ研究を完成させる予定である.
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