研究課題/領域番号 |
21K03183
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研究機関 | 久留米工業大学 |
研究代表者 |
境 優一 久留米工業大学, 工学部, 任期付助教 (10815567)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 保型線形微分方程式 / モジュラー形式 / 準モジュラー形式 / 頂点作用素代数 / 指標関数 / 単純ヴィラソロ代数 |
研究実績の概要 |
本年度は,保型線形微分方程式および保型線形微分作用素に関する研究において研究結果の論文化及び研究集会講演を実施し,講演聴講者との活発な議論を行った.特に,本研究結果を用いた新たなモジュラー形式への応用の可能性について知見を得ることができた.(本研究は,大阪大学・永友清和氏とマックスプランク研究所・D. Zagier氏との共同研究である.)本研究については,現在投稿中である. また,単純ヴィラソロ頂点作用素代数の(2, N) (Nは5以上の奇数) 型の指標関数と,大阪大学・伊吹山知義氏が系統的に定義した分数重さのモジュラー形式との対応関係を与え,頂点作用素代数の知見を用いて整数論の立場から与えられた種々の結果の別証明を与えた.特に,ベクトル値モジュラー形式の観点から考察を行うことにより,分数重さのモジュラー形式の空間の(部分的な)生成元が満たす保型線形微分方程式の存在を証明した. さらに,テータ群上での保型線形微分方程式の一般形を整備し,特定の有理的な頂点作用素超代数の指標関数が,2階または4階のテータ群上での保型線形微分方程式の解になることを示した.また,モジュラー群上での2階保型線形微分方程式(Kaneko-Zagier方程式)の類似の対象として,テータ群上でのKaneko-Zagier方程式を定義し,その解として現れるdepth1のextremal な準モジュラー形式と頂点作用素超代数の指標関数との対応関係を再構築した.本件については,昨年度からの継続研究であるが,Kaneko-Zagier方程式と同様に対応するデルタ関数(または,Dedekind eta関数の積・商)の類似物の取り方の正当性について改めて確認をした.(本研究は,大阪大学・永友清和氏と鹿児島大学・有家雄介氏との共同研究である.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者との密な連絡及び意見交換により定期的な進捗状況を確認しつつ研究を実施することができた.また,研究集会等での講演発表や参加者との議論により新たな研究対象を得るなどした.さらに,計算機による数値実験等においても,これまでの様々な議論で得た知見をもとに種々の結果を得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見により保型線形微分方程式の一般理論の構築はほぼ完了したと考える.今後においては,解析的な立場からの保型(線形)微分方程式の考察を行う.特に,G.Masonによって与えられたベクトル値モジュラー形式と保型線形微分方程式との関係をWronskian行列において評価する手法を拡張することに注力したい.また,テータ群上での保型線形微分方程式の分類についてモジュラー群上での類似がいえるか否かについても研究を進めることとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ等での出張等の移動に関する影響は前年度よりも減少はしているが,感染拡大期における出張の取り止めなどがあった.加えて,ウクライナ等の国際情勢や円安の影響により航空機や宿泊費の高騰により当初計画していた国外出張を取りやめるなどがあった.翌年度においては,新型コロナによる行動制限が緩和されつつあるため,研究集会等への参加がコロナ禍以前に近い状態で行えると考える.また,国外への出張(研究集会等の参加)においては,出張先の物価等の状況を鑑みつつ,出張期間の短縮などで対応を行う予定である.また,通信環境などを再整備し,Zoomやskypeなどを用いて参加可能な研究集会等については,遠隔参加を行う.これらの対応策により今年度実施不可能であったことを含め,本事業の使用計画においての範疇で適切に使用できる見込みである.
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