研究課題/領域番号 |
21K03184
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
西山 享 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70183085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 旗多様体 / 多重旗多様体 / 余法束多様体 / Steinberg写像 / RSK対応 / 冪零多様体 / モーメント写像 / ヘッケ環 |
研究実績の概要 |
本課題では旗多様体やその直積である多重旗多様体 X への群作用が主要な研究対象である.研究目標は,旗多様体への群作用の基本的な性質を明らかにし,それを用いた組合せ論や幾何学,そして表現論へ応用することである.ここで言う「基本的な性質」とは群作用による軌道の不変量を用いた分類,そして,それらの不変量を元にした軌道の次元や閉包関係,同変(コ)ホモロジー環の構造などの多岐にわたる性質を指す.とくに不変式論との関係,組合せ論との互恵的な関係を重視している.最終的目標は実リー群の表現や量子群の表現論への発展的な応用であるが,こちらは将来の課題である.
今年度の成果として,共同研究者の L.Fresse (Univ. Lorraine, IECL) と共に,AIII 型対称空間に付隨する二重旗多様体 X = K/B_K x G/P 上の球部分群 K による軌道のグラフを用いた組合せ論的記述,軌道の次元や閉包関係,ヘッケ加群の構造などが完全に明らかになったことが挙げられる.また,2種類の Steinberg 写像とシュプリンガーファイバーの構造もヤング盤を用いた組合せ論的な記述によって明らかになった.
一方で,この結果は AIII 型の特殊な状況をうまく使っており,他の型に拡張するのは難しい.そこで,Fresse 教授とともに,(1) 他の古典型の二重旗多様体を AIII 型に埋め込むことによって,既に得られた結果を応用することを研究中である.(2) ルート系やワイル群などの一般的な概念を用いた軌道の記述ができないかと模索中である.(3) 本間大幹氏(九州大学)による箙の表現を用いた軌道の分類理論が発表され,箙による軌道の不変量などの研究を進めている.こちらは,本研究課題期間中になんらかの形で発表したいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症によるパンデミックが収束に向かい,国内外での研究集会を始め,研究者の招聘や訪問が容易になった.今年度からは(大学での本務による負担を除けば)研究に没頭できる態勢が整った.すでに海外での研究集会への参加も決まっており,共同研究者の一人である Pavle Pandzic 教授を招聘して共同研究を進めるなど,研究は順調に推移している.
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今後の研究の推進方策 |
AIII型の対称対に付隨する二重旗多様体に関しては,グラフやヤング盤など組合せ論的な道具立てを用いることでほぼ完全な結果を得ることができた.一方で,もとは Magyar-Weyman-Zelevinsky による箙の表現論を用いた手法が二重旗多様体にも有効であることが本間大幹氏(九州大学)の研究によって判明した.一方で,本間氏の手法はまだ完全とは言えず,箙の手法が適用できるというアイディアが十分に生かされているとは言えない.そこで共同研究者の Fresse 教授とともに,箙の表現論を用いた二重旗多様体上の軌道に関する不変量(たとえば次元や閉包関係,シュプリンガーファイバーの情報)を明らかにするという研究を既に開始しており,いくつもの成果が上がりつつある.今後はこの手法をさらに洗練すること,また,AIII 型以外の二重旗多様体に応用することなどを目指す.また,箙の表現論をルート系やワイル群といった,より洗練された代数的な対象によって置き換えることも重要であると考えている.
一方で,対称空間に付隨する旗多様体として種々のグラスマン多様体(とその一般化)が知られており,そのコホモロジー理論(シューベルト解析)も本研究課題の重要なテーマである.これについてはザグレブ大学の Pavle Pandzic 教授,および マンチェスター大学の Kieran Clavert 研究員と共に共同研究を進めている.とくにコンパクト対称空間を旗多様体とみなすことで対称空間にもシューベルト解析を考えることができるようになるため,種々の興味深い話題が研究できそうである.研究は順調に進んでいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
この年度においては,コロナウィルスの感染拡大・パンデミックはいまだ収束していない状況であったため,セミナーの中止,招聘事業の延期などを余儀なくされた.また,年度末に計画していた海外の研究者の招聘による共同研究も,招聘予定だった研究者の事情により延期せざるを得なかった.本年度はパンデミックも収束して国内外の研究者との交流も復活すると期待されるため,予定通りに研究が進むと期待している.
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