研究課題/領域番号 |
21K03188
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
杉山 倫 日本女子大学, 理学部, 講師 (20633233)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 数論幾何 / モチーフ理論 / modulus presheaf |
研究実績の概要 |
これまでに得られている研究結果、主に、加法群・乗法群のmodulus presheafとしてのテンソル積の構造についての研究と文献調査を継続して行った。 (1)Hochschild ホモロジーとの関連 加法群のmodulus presfheafとしてのテンソル積を用いて、通常の環上の加群に対するHochschildホモロジーの複体と同様の方法により、modulus sheaf(または相互層)としての加法群に対する複体を定義し、そのホモロジーについて研究した。その結果、二つの加法群のテンソル積に対して得ている結果を用いることにより、1次のホモロジーの構造を決定することができた。また滑らかな環に対するHochshildホモロジーとケーラー微分の加群との同型定理との比較から、一般の場合のホモロジーが対応する次数のケーラー微分の層と同型になるであろうという予想を立てることができた。この予想については、やや強い仮定の下であるが、2次の場合も正しいことを確認できた。 (2)乗法群およびミルナーK群の接空間について 乗法群と加法群の関係として、乗法群の接空間が加法群と同型となるというものがある。一方で、ミルナーK群の接空間はケーラー微分の加群と関係している。さらに、相互層として乗法群のn個テンソル積がミルナーK群の層になることを示している。このような関係から、ミルナーK群の層に対し接空間を取る操作を繰り返すことで得られる層について調べた。その結果、2次の場合にこれまでに示している加法群2個のテンソル積と同じ層が得られることを確認した。これにより、3個以上の加法群のテンソル積の構造についての予想を明確に定式化することができた。また(1)の検証結果と合わせて、強い仮定の下ではあるが、3個の場合に正しいことを確認することができた。今回得られた予想の検証を継続していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目指している加法群のテンソル積の構造についての予想を明確に定式化できた点は大きな進展であった。また「接空間」という新たな視点を導入できたことは良い進捗であった。しかし、予想の証明が想定していたよりも難解であり、特定の場合に強い仮定の下での結果のみとなってしまっているため。
|
今後の研究の推進方策 |
今回、定式化できた予想の検証を継続して行っていく。その際、直接的なアプローチだけではなく、「接空間を取る」とう新たな視点を導入できたため、この方向からのアプローチも試していく考えである。 一方で、接空間をモジュラス付きモチーフ理論の中でどのように捉えることができるのかという新たな研究課題が見つかった状況とも言えるため、柔軟に研究計画を変更しながら進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加した(参加予定していた)研究集会が対面およびオンラインのハイブリッド開催になるなどし、オンライン参加にした。また当初海外出張を想定していたが、新型コロナ感染症に対する各国の取り扱いなどを鑑み見送った。これらにより出張費としての支出が計画段階よりも少なくなった。 次年度以降、参加できる研究集会への旅費としての使用が主なものとなる予定だが、状況に応じてオンライン参加も取り入れていくつもりである。
|