研究課題/領域番号 |
21K03200
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小島 秀雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90332824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アフィン代数曲面 / 正規代数曲面 / 対数的小平次元 / 導分 / 多項式環 / 正規del Pezzo曲面 |
研究実績の概要 |
射影有理曲面上の既約曲線の補集合、ピカール数1の正規del Pezzo曲面、および、多項式環の部分代数について研究した。今年度に主に得られた成果は次の通りである。 (1) 高橋剛氏、唐澤翔太朗氏 (新潟大学大学院生) と共同で、ヒルゼブルフ曲面上の既約曲線の補集合について研究し、補集合の対数的小平次元が2になるための曲線の種数や次数に関する十分条件を与えた。これらは射影平面曲線の場合に若林功氏や吉原久夫氏によって得られた結果のヒルゼブルフ曲面版になっている。更に、ヒルゼブルフ曲面上の尖点有理曲線で特異点が2個のものについて、その補集合の対数的小平次元が0以上となることを示し、更に、補集合の対数的小平次元が0となる場合の構成方法を与えた。 (2) 服部京平氏 (新潟大学大学院生) と共同で、有理数体を含むUFD (一意分解整域) 上の多項式環の導分の冪零元からなる環について研究した。冪零元からなる環の超越次数が1以下のときは、その環はUFD上1個の元で生成されることを証明した。更に、2変数多項式環上の単項式導分(変数の像が単項式となる導分)について、その冪零元からなる環を決定した。これらの結果は服部氏との共著論文にまとめ、現在、投稿中である。 (3) 標数0の代数閉体上のピカール数1の正規del Pezzo曲面について、その曲面が有理対数的標準特異点のみを持ち、更に川又対数的端末特異点でないものを含む場合の分類を調べた。そのような曲面の非特異部分に対して開代数曲面の極小モデルを走らせることにより、その曲面がアフィン直線の線織構造を持たない(アフィン線織的でない)場合の構成方法が分かった。また、澤原雅知氏(埼玉大学研究員)と共同で、アフィン平面の有限群商として現れるアフィン代数曲面の極小コンパクト化として現れる、ピカール数1の正規del Pezzo曲面の部分的分類を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実績報告書に記載した研究計画において、今年度は主に1. ピカール数1の高々有理対数的標準特異点のみを持つ正規デルペッゾ曲面、2. ヒルゼブルフ曲面上の尖点有理曲線、3. アフィン平面の有限群商の極小コンパクト化、4. ピカール数1の正規有理曲面から曲線を除くことにより得られる開代数曲面の対数的多重種数、について研究を行う予定であった。これらの内、1と2について順調に研究が進展した。3と4についてはコロナ感染症の影響により対面での研究活動が制限を受けたことと申請者自身の大学内と数学会での役職による多忙のため、十分に研究を遂行することができなかった。ただ、当初予定していなかった多項式環の導分による部分環の研究の研究が進展し、研究集会での発表と論文作成までたどり着いたことは大きな成果であると思う。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度予定して十分に研究が進展しなかった課題を中心に研究を遂行する予定であるが、新たに研究するべき課題が見つかった。次年度は次のような課題について、研究を遂行する。更にこれまでに得られた結果と次年度の研究成果について、研究集会での発表と論文執筆を行う。 (1)ピカール数1の高々有理対数的標準特異点のみを持つ正規デルペッゾ曲面で、川又対数的端末特異点でない特異点を持つものを分類し、これまでに得られた結果と合わせて論文にまとめる。これについては、高橋剛氏や岸本崇氏と協力しながら研究を遂行する。 (2)ピカール数1の正規有理曲面から曲線を除くことにより得られる開代数曲面の対数的n種数が正となるnの値の範囲を調べ、令和4年度に得られた結果と合わせて論文にまとめる。 (3)3変数多項式環のfactorially closedな部分環とレトラクトが多項式環となるための条件を、高階導分の核や正規アフィン代数曲面の構造定理を用いて調べる。これについては、長峰孝典氏や指導している大学院生と協力しながら研究を遂行する。 (4)今年度に引き続き、アフィン平面の有限群商の極小コンパクト化で、対数的標準特異点のみを持つ場合と曲面の標準因子が数値的に自明になる場合を中心に、分類を遂行する。この研究では岸本崇氏と氏の元学生である澤原雅知氏(埼玉大学研究員)と協力しながら研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症により、対面での活動制限が続き、中止あるいはオンライン開催となった研究集会が多かったことと外国出張を行えなかった。また、研究代表者での学内業務と日本数学会での業務が重なり、他に予定していた研究打ち合わせや研究集会参加も予定していたよりも制限された。そのため、417,822円を次年度に繰り越すことになった。繰り越した研究費については、研究集会の論文集と代数幾何関係の図書の購入、埼玉大学、静岡大学、関西学院大学の研究者との研究打ち合わせ、国内での研究集会への参加費に使用する。 令和5年度は国内での学会や研究集会への参加と主催する研究集会での講演者の招聘、図書の購入、学術論文の掲載料(オープンアクセス化のための費用)に使用する。後半に新潟大学か埼玉大学で国際研究集会を開催する予定でおり、そこでの国内外の研究者の招聘にも研究費を使用する予定である。
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