研究課題
多面体から定まるトーリック多様体とその上の豊富な直線束に対し,以下の3つの不変量(いずれも正の実数)に着目した.1つ目のセシャドリ定数は,その直線束の正値性をはかる代数幾何の不変量である.2つ目のグロモフ幅は,開球のシンプレクティック埋め込みに関するシンプレクティック幾何の不変量である.3つ目の束幅は,多面体の大きさに関する凸幾何の不変量である.多面体Pの束幅をw(P)とすると,対応するトーリック多様体のセシャドリ定数やグロモフ幅はc w(P)以上かつw(P)以下であることが知られている.ただしcは次元のみに依存する定数である.具体的なcの値も求められているが,cとしてとれる最大の値がいくつであるかは2次元以上では知られていなかった.そこで当該年度は主に2次元の場合を研究した.特に2次元の場合に3/4がcとしてとれる最大の値であることを示すことができた.またセシャドリ定数やグロモフ幅が3/4 w(P)に一致するような多面体Pを決定した.この結果はプレプリントとして発表する予定である.またアーベル多様体上の豊富な直線束のbasepoint-freeness threshold(以下BFTと略す)という不変量についても研究した.偏極アーベル多様体に対し,「型」と呼ばれる正の整数の列が定まる.以前の研究で代表者は与えられた型の一般の偏極アーベル多様体に対しBFTを型に現れる正の整数を用いて上からの評価を行った.当該年度はその評価の改良について研究したが,とくに新しい結果は得られなかった.
2: おおむね順調に進展している
2次元トーリック多様体のセシャドリ定数やグロモフ幅などの正値性に関する不変量について,束幅を用いて良い評価を得ることができたため.
2次元の場合に得られた結果が3次元以上の場合にどうなるかを調べる.またアーベル多様体上のbasepoint-freeness thresholdに関する研究も続ける.
コロナ禍の影響で予定していた研究集会やセミナーに参加できなかったため.次年度はいくつかの研究集会に参加する.また研究者を招聘して研究打ち合わせも行う予定である.必要なパソコン,その周辺機器なども購入する.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Advances in Geometry
巻: 24 ページ: 34~37
10.1515/advgeom-2023-0028
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https://sites.google.com/site/atsushiito221/