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2021 年度 実施状況報告書

アデリック曲線上のアラケロフ幾何

研究課題

研究課題/領域番号 21K03203
研究機関京都大学

研究代表者

森脇 淳  京都大学, 理学研究科, 教授 (70191062)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードアラケロフ幾何
研究実績の概要

パリ大学の陳氏と共同研究を進め、アデリック曲線上でのヒルベルト・サミュエル公式の証明が完成し、論文としてまとめた。具体的には以下の通りである。体 K の適正なアデリック構造 S = (K, (Ω,A,ν),ψ) を固定する。X は K 上の幾何学的に既約なd次元の射影代数多様体とし、(L, φ)は X 上の L が豊富であるアデリックな直線束とする。このとき、deg(H^0(X, L^n), ξ_{nφ})が考えることができ、deg(H^0(X, L^n),ξ_{nφ})/(n^{d+1}/(d+1)!)の n に関する極限値が存在するこがわかる。それを(L, φ)の算術的な χ-体積と呼び、vol_{χ}(L, φ)で表す。一方、前の論文において、S 上の算術的交点数 ((L, φ)^{d+1})_S を定義した。ヒルベルト・サミュエル公式とは、vol_{χ}(L, φ) = ((L, φ)^{d+1})_S を主張するものである。通常の代数幾何学おいて、これはリーマン・ロッホの定理の帰結であり、K が代数体の場合は算術的リーマン・ロッホの定理から導かれる。vol_{χ}(L, φ) ≧ ((L, φ)^{d+1})_S は、ヒルベルト・サミュエルの不等式と呼ばれるもので、当初、この証明を X の射影空間への射影を用いて成功することができた。応用上はこの不等式で十分であったので、逆の不等式の証明は次の課題として扱う予定であったが、自明な絶対値上のアラケロフ幾何を用いることで、逆の不等式の証明ができることが判明した。このアイデアは、古典的な代数体上の算術的ヒルベルト・サミュエル公式を考えても、全く新しい画期的な証明を与えるものであることが判明した。今後、さらに研究を推し進め、当分布定理等の種々の応用を考えて行きたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度にアデリック曲線上での交差理論を完成し、ヒルベルト・サミュエルの不等式 vol_{χ}(L, φ) ≧ ((L, φ)^{d+1})_S を完成できれば順調かと考えていたが、予想に反して,ヒルベルト・サミュエルの等式vol_{χ}(L, φ) = ((L, φ)^{d+1})_S まで完成した。ヒルベルト・サミュエルの不等式の逆の不等式を証明するため、自明な絶対値上のアラケロフ幾何を用いるという画期的なアイデアを用いている。これは、古典的な代数体上の算術的ヒルベルト・サミュエル公式を考えても、全く新しい手法を与えていると言える。以上の観点から、当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

応用を目指したい。ますそのためには、アデリック曲線上のヒルベルト・サミュエルを用いることで、種々のアデリック直線束の算術的交点数の非負性について考察を深める必要がある。これについてはパリ大学の陳氏と共同研究を進めている。これらが、うまく完成すると、代数体の場合の一般化になる当分布定理等の真にディオファントス幾何学に応用につながる結果が導きだせると考えている。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍で、共同研究者と研究打ち合わせのための海外出張が思うようにできず予算の執行ができなかった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Arakelov Theory on Arithmetic Surfaces Over a Trivially Valued Field2022

    • 著者名/発表者名
      Huayi Chen and Atsushi Moriwaki
    • 雑誌名

      International Mathematics Research Notices

      巻: 2022 ページ: -

    • DOI

      10.1093/imrn/rnab302

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Around Arakelov Geometry2021

    • 著者名/発表者名
      Moriwaki
    • 学会等名
      Arithmetic algebraic geometry and mathematical physics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] The Mordell Conjecture2022

    • 著者名/発表者名
      H. Ikoma, S. Kawaguchi and A. Moriwaki
    • 総ページ数
      169
    • 出版者
      Cambridge University Press
    • ISBN
      978-1-108-84595-3

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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