研究実績の概要 |
当研究では、ディリクレL関数や保型L関数の零点分布や積分モーメントなどの解析的性質を中心に、整数論への応用を見据えて解析的整数論全般の研究を実施した。 まず、前回の研究からの継続として、原始的指標に付随するディリクレL関数の零点分布の研究を行い、該当するL関数は、指標全体で平均すると、自明でない零点全体のうち少なくとも60%以上は関数等式の中心線上に乗っている(一般リーマン予想の条件をみたしている)ことを証明した。次に、ディリクレL関数の積分モーメントと零点密度の関係性について研究し、積分モーメントに関して予想されている評価が成り立つならば、これまでに知られている無条件に成り立つ零点密度評価(Jutila, Bourgainらによる)を上回る評価が得られることを明らかにした。また、L関数の解析的性質の応用として素数分布に関する結果が知られているが、それを利用して、辺の長さが素数の負ベキになるような正方形の詰め込み問題の研究を行った。 最終年度は、GL(4)の保型L関数の関数等式の中心線上の2乗平均について研究を行い、積分のサイズに関するある仮定の下で、ランダム行列理論などから予想されるある漸近公式が得られることを証明した。 これらの研究成果は合計4本の論文にまとめ、うち3本はMathematische Zeitschrift誌などの海外の専門誌に掲載された。残り1本は現在arXivに投稿しており、専門誌に投稿を計画している。また、これらの研究に関してゼータ若手研究集会、解析数論セミナーIIなど国内の研究集会で研究発表を行った。
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