研究課題/領域番号 |
21K03206
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山崎 義徳 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (00533035)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多重ゼータ関数 / Schur 関数 |
研究実績の概要 |
Schur 多重ゼータ関数とは Euler-Zagier 型多重ゼータ関数、多重ゼータスター関数の組合せ論的一般化であり、表現論など数学の様々な分野で重要な役割を果たす Schur 関数のゼータ関数類似であるということもできる。本年度は主に Schur 多重ゼータ値の和公式について研究を行った。ここで言う和公式とは、固定された型と重さを持つ収束インデックスすべてにわたる Schur 多重ゼータ値の和が満たす関係式のことである。和公式は従来の多重ゼータ値の関係式の研究において最も基本的な関係式の一つであると認識されており、それが対象を Schur 多重ゼータ値に一般化した場合にどのように拡張されるのかを調べることが目的である。今回は型がリボンの場合に限定して考察を進め、上記和がリーマンゼータ値の有理数係数多項式で書けたり、さらに強くリーマンゼータ値の有理数倍で書けたりする場合が存在することを明らかにした。そのような場合の一つである anti-hook と呼ばれるリボンの場合の和公式は、Euler-Zagier 型多重ゼータ値、多重ゼータスター値に対する和公式の共通の一般化になっていることに注意する。一般のリボンの場合にもある程度の公式化はできているが、より簡潔な形に式変形できるかどうかについては現時点では不明であり、これについては今後の課題とする。以上は名古屋大学の Henrik Bachmann 氏、新居浜高専の門田慎也氏、立教大学の鈴木雄太氏、慶應義塾大学の山本修司氏との共同研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の方針の一つとして「従来の多重ゼータ値の研究をどこまで Schur 多重ゼータ値に対して一般化できるか」ということを掲げている。今回(部分的ではあるが)和公式が得られたことはそれ自身意味のあることだと考えられるが、それ以上に本方針が機能していることを示唆するものであり、今後和公式以外の関係式についても拡張が得られる可能性を期待させるものである。また和公式についてはリボン型という基本的な場合での考察を深めることができたため、今後型を一般化する際に今回の議論が役に立つと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上で書いたように、一般のリボンの場合の和公式については表示について改良の余地があると考えられるため、まずはそれに取り組む。これは、本質的には二項係数の重みがついたリーマンゼータ値の積に関する和公式を求めることであり、関連する既存の研究結果を適宜適用するなどして簡素化・簡略化を目指す。また、リボン型以外の型の場合にも和公式について研究し、数値実験を行うなどして当該和がどのような表示を持つか考察を深める。以上、ある程度結果が出揃ったら、論文にまとめて投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のためセミナーや研究集会がオンライン開催であったなど、旅費として計上していた経費を使わずに済んだことが大きな理由である。この分は、来年度基本的には旅費として使用する予定ではあるが、コロナの状況や社会情勢等踏まえて適宜判断したい。旅費としての使用が難しい場合は専門書等を購入するための物品費として使用する予定である。
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