研究課題/領域番号 |
21K03213
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平松 直哉 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 准教授 (20612039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 極大Cohen-Macaulay加群 / 関手圏 |
研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に行った直既約な有限生成極大Cohen-Macaulay(MCM)加群の同型類のなす集合に対して定義したZieglerスペクトラムの考察を推し進める方向で研究を行った。具体的にはZieglerスペクトラムの零点定理(閉集合と関手圏のセール部分圏との対応)についての考察を行った。無限生成加群の枠組みで与えられている零点定理は、本課題の状況では成り立たないことがわかった。それに伴い、零点定理が成り立つ状況はどのような状況かを調べた結果、基礎環が孤立特異点を持つとき、MCM加群の集合における閉集合と、関手圏のセール部分圏で左直交をとってさらに右直交をとったものが元の部分圏に一致するものとの間に1対1対応があることがわかった。基礎環が孤立特異点を持つという仮定をしたものの、一方で閉集合に対応する関手圏の部分圏は必ず先の、直交に関する条件を満たすため、零点定理に対する一応の答えを得たと考えられる。 2021年度に行ったKrull-Gabriel次元の考察で、クネーラの周期性による圏対応があるとき、それらのKrull-Gabriel次元は一致するという結果を得ている。この結果を精査し、Krull-Gabriel次元が一致するような圏対応を与える関手の条件を調べた。ここで必ずしも圏対応が圏同値である必要はないことを注意しておく. これはMCM加群圏のKrull-Gabriel次元を計算する際に、圏構造が比較的わかっている状況(例えば有限次元多元環上の加群圏)に帰着させることを念頭に置いた考察である。より広い枠組みでKrull-Gabriel次元の考察ができることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度におけるZieglerスペクトラムの零点定理の考察は前年度に計画された方策に基づいて行ったものであり、定理が成り立たない例や、特定の状況で定理の成立を示すことに成功した。さらにKrull-Gabriel次元の考察において、他の圏との関連付けを行う関手の特徴づけを与えられたことも、今後の次元の評価や計算への応用において可能性を期待でき、評価すべき成果と考えている。 しかしながらこららの考察から、Krull-Gabriel次元と表現型の関係性や、本課題の主目標であるブラウアー・スロールII型予想への考察までには至っていない点も事実である。 以上の理由から、現状は目標達成に向けてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MCM加群圏の、Zieglerスペクトラムの零点定理などの分類定理やKrull-Gabriel次元の考察から得られた成果を基盤に、Krull-Gabriel次元やCantor-Bendixson階数と表現型との関係性を解明することを目指す。Krull-Gabriel次元の評価を与える圏対応でクネーラの周期性によるもの以外の例を構成し、有限次元多元環などの状況に帰着するなどして表現型との関連を模索する。また関手圏の、ある性質を満たす関手(例えば特定の加群を代入したときの長さがn以下)からなる部分圏に対応するZieglerスペクトラムの部分集合の性質を調べるなどして、Zieglerスペクトラムの階層的な考察を試みる。これらの観察を通してブラウアー・スロールII型予想について調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務等の関係から計画していた国際会議への参加や研究打ち合わせを取りやめたため使用額に差額が生じた。2024年度は所属が変わり、研究者の招聘も実施し易くなったので、関連する研究者との招聘、打ち合わせのための費用として、また研究成果発表のための会議出席のための旅費として利用する。
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