研究実績の概要 |
可積分幾何に関して,球面内の等径超曲面Nのガウス像Lの位相のフレアホモロジーの計算で未解決部分に取り組んだ.N自身のコホモロジーの計算を,新たな手法「Nを焦部分多様体F上の球面束として捉え,Thom-Gysin完全列を適用する」により行った.Munznerによる,Nが球面を二つの円板束に分解することを使わないので,より多くの空間における計算に適用可能な手法である.また,ガウス像Lの位相の計算という本来の目的も部分的に解決した.LはNを有限巡回群Z_gで割った構造をもち,gが素数でないg=4,6が問題なので,幾何学的な構造解明が必要となる.特にg=4に現れるClifford代数の表現に随伴する等径超曲面は非等質な例を無限に含む点で興味深い.一部でLのコホモロジーという最終目的まで計算でき,さらに最終目的であるFloerコホモロジーの計算に繋げる可能性を得た.これらの研究は大阪公立大の大仁田義裕教授,茨城大の入江博准教授との共同研究である. 極小曲面に関する課題として,2次元戸田方程式の周期解を用いた複素射影空間におけるラグランジュ極小曲面を計量で特徴付ける研究,および代数的極小曲面のガウス写像の除外値問題がある.前者については徳島大の國川慶太氏と議論している.後者については名大の小林亮一教授と研究しているが Nevanlinna理論を円板上で構築する という非常に難解な議論に対し,普遍被覆に上げない議論も検討中である. 新たな課題として,極小超曲面に関するChern予想をDupin超曲面について研究した.コンパクトを仮定すると,g=3では平均曲率一定,g=4ではさらにスカラー曲率一定,g=6では平均曲率あるいはスカラー曲率のいずれか,そしてLie曲率が一定であれば等径超曲面になることを証明し,Dupin超曲面についてはほぼやり切った.論文は投稿準備中である.
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