研究課題/領域番号 |
21K03215
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
奥間 智弘 山形大学, 理学部, 教授 (00300533)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 2次元正規特異点 / 幾何種数 |
研究実績の概要 |
本研究では,与えられた位相型をもつ複素2次元特異点について,基本的な解析的不変量を評価し特異点の特徴をとらえること,イデアルの正規節減数(normal reduction number)について調べることを目標としている.本年度は主に正規節減数に関連する研究を行った.正規節減数は,特異点解消空間上のイデアル層のコホモロジーにも関係する. ハンガリーのJanos Nagy 氏と Andras Nemethi 氏との共同研究においては,特異点解消グラフが木であって各例外既約因子が有理曲線であるような特異点の正規節減数に関する研究を行った.一般の特異点について特異点解消空間上のサイクルのイデアル層のコホモロジーの次元は幾何種数以下であることが分かっていたが,研究対象の特異点については0から幾何種数までのすべての整数がコホモロジーの次元として実現されることを示した.また,正規節減数の位相不変量による上限を与えた. 渡辺敬一氏と吉田健一氏との共同研究においては,楕円型イデアルの研究を継続した.楕円型イデアルはイタリアの Maria Evelina Rossi 氏も加えた共同研究において導入された.渡辺氏と吉田氏との共同研究により幾何種数イデアル(正規節減数が1)の良い性質が明らかになっていた.楕円型イデアルは,その正規節減数は2であり,幾何種数イデアルの次に研究すべき対象である.まず,楕円型イデアルの core の具体例をいくつか構成した.幾何種数イデアルの場合と異なり,core の整閉性やサイクルによる表現に多様性があることが分かった.それらの研究に関連し,イデアルの余次元と重複度の比の分布に関する結果も得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は対面による議論や研究集会への参加の機会に恵まれなかったが,正規節減数に関しては,その研究開始時のコホモロジーの次元の値域の問題の部分的解決や今後の楕円型イデアルの理論構築の手掛かりとなる例が得られるなどの進展があった.また,正規節減数の位相不変量による上限の研究は,その上限を実現する特異点の複素構造の研究へも結びつくものである.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,楕円型イデアルの理論が幾何種数イデアルよりも複雑ではあるが豊かでもあることが見いだせた.今後もさらに興味深い例を探求しつつ環論と幾何の双方の視点から研究を深化させたい. そのために,渡辺氏,吉田氏との共同研究を継続するが,対面での議論も増やしていきたい.また,特異点に関連する分野の知見を得るため,積極的にそれらの分野の研究集会に参加したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
対面による研究集会のへの参加に備えていたが,その機会がなかった.次年度は研究集会に積極的に参加し,成果の発表や情報収集行う.また,対面による共同研究活動も行っていきたい.それらのために旅費を使用する.例の計算で使用するパソコンや必要な文献を入手することにも研究費を使用したい.
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