研究課題/領域番号 |
21K03216
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹下 基生 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70452422)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レンズ空間手術 / 4次元多様体の手術 |
研究実績の概要 |
今年度は、ポシェットを用いた手術の研究を行なった。ポシェットは岩瀬と松本によって定義された4次元多様体であり、彼らはこれに沿った手術(多様体の切り貼り)を提案した。この手術によってできる多様体の研究は、本研究課題での研究と関連すると判断し、東京工業大学の鈴木龍正氏と共同研究を行った。本研究において、できる多様体のホモロジーの計算方法を導出した。そのとき、ポシェットのスロープの他にその埋め込みの絡み数を考える必要があることを突き止めた。また、いくつかのホモトピー4球面を作った。エキゾチックな4球面を発見するには至っていないが、いくつかの場合に4球面と微分同相であることを示すことができた。この手術の結果は、グルック手術(埋めこまれた球面に沿ってできる手術)に非常に近いものであることがわかった。次年度は、この手術を一般化したものを扱い、その微分同相類について求める。 レンズ空間結び目の不変量としてアレクサンダー多項式が有効であることが知られている。本年度はレンズ空間結び目のアレクサンダー多項式に関する研究を行なった。まずそのアレクサンダー多項式の4番目の係数についての研究を行い、その証明をまとめた。Greene氏はレンズ空間手術の分類においてchangemaker格子を定義し、それを用いることで、分類の証明を完成させた。本年度はこのchangemaker格子とアレクサンダー多項式との関連を調べ、非ゼロ曲線との関連を調べた。その結果、アレクサンダー多項式の非自明係数ではなく、ゼロ係数の方に着目するという方向性を定めることができた。この理解を用い、次年度は、ゼロ係数の部分がどのように得られているのか、またそのspinc構造を用いた議論をする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スライスリボン予想に関する研究はそれほど進んでないが、4次元球面のある手術を考える機会があり、それについて考察した。その結果、ホモトピー4球面の理解がある一定程度進んだと思われる。 レンズ空間結び目についての研究として、アレクサンダー多項式の4番目の係数についての証明をいくつか完成させた。これは大きな成果といえる。また、後半では、Greene氏の論文を理解するところに時間をかけた。その分、レンズ空間結び目のアレクサンダー多項式の理解が進んだ。しかし、現在、非ゼロ曲線との関係を突き止める部分については進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ホモトピー4球面(ホモトピー型が4球面と同じである4次元の可微分多様体)がもつ一般論について研究をする。ホモトピー4球面のハンドル分解がどのような性質をもつのか?また、それがどのようなバリーションをもつか、そのようなハンドル分解がもつ標準形について求める。この中で、4次元球体のハンドル分解と比較してどのような差があるか調査をする。このことから、スライスリボン予想に関するハンドル分解の困難な部分を取り出す。 レンズ空間結び目のアレクサンダー多項式の研究を引き続き進める。Greene氏の行なったアレクサンダー多項式の係数の制限を一般化した状況で議論を行う。現在のところ、情報の多くを手探りで求めている状況である。しかし、分類が効率よく進む部分とその議論もあり、どの部分が分類の本質的な部分なのかをを突き止める必要がある。また、Greeneが行なった分類が、我々の分類の一部だが、それが、全体の分類の中でどのような位置を占めるのかについて突き止める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年計画していた科研費による出張および科研費による現地開催の研究集会が取りやめになり、大幅に研究費が余ったことにより、次年度に研究費の一部を回すことにした。これにより、来年度は、これらの研究費は共同研究や出張をすることにより、研究成果を上げることを計画している。
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