研究課題/領域番号 |
21K03227
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塚本 真輝 京都大学, 理学研究科, 教授 (70527879)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 力学系 / エルゴード理論 / 平均次元 / レート歪み理論 / 正則曲線 |
研究実績の概要 |
2023年度の最大の成果は,ブロディ曲線と呼ばれる正則写像がなす無限次元力学系に対して,アノソフ力学系の類似の理論を構築したことである.これはこの研究計画の当初からの最大の目標の一つであった.以下これについて詳しく説明する. ブロディ曲線のなす力学系上の不変確率測度(すなわち「ランダム・ブロディ曲線」)を調べることを考える.通常のエントロピーは無限大になるので意味をなさない.そこで「レート歪み次元」という量を考察する.これは情報理論の文脈で1990年代に導入されていたものである.まず,ランダム・ブロディ曲線のレート歪み次元が,ある種の「ポテンシャル関数」の積分で上から抑えられることを示した.これは可微分力学系の理論で知られていた「ルエルの不等式」のブロディ曲線に対する類似とみなすことができるものである.さらに,この「ブロディ曲線に対するルエル不等式」の等号を成立させる不変確率測度が豊富に存在することを示した. この研究の主要な道具は,以前から私が準備してきた「ポテンシャル付き平均次元に対する変分原理」の理論である.これは,アノソフ力学系のエルゴード理論において,「位相的圧力に対する変分原理」が本質的な役割を果たしたことのブロディ曲線理論における類似になっている.これによって,私が開発した新しい変分原理が単なる抽象論ではなく,具体例に密接に結びつき重要な理論である証拠を提示できたと考えている. 以上の理論はRate distortion dimension of random Brody curvesという題の論文としてまとめて,現在学術誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の当初からの主要目標の一つを達成できた.順調に進展していると言って間違いないはずである.
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今後の研究の推進方策 |
ブロディ曲線に対するエルゴード理論は予想を超えるほど見事にまとめ上げることができた.しかし,もう一つの目標である「平均次元に対する二重変分原理」を一般の力学系に対して完成させることは未解決であり,これを追求していかなければならない. また,ブロディ曲線の理論が予想以上に大きく発展したため,当初は見えていなかった多くの新しい問題が表れてきた.現時点で出来上がった理論は「一様双曲的な可微分力学系のエルゴード理論」の類似物であるが,「一様双曲性」を弱めた理論に対するブロディ曲線類似は何か?これを考えていく必要がある.おそらくその考察を深めることは,一般の代数多様体内のブロディ曲線を研究することと自然につながっていくはずである.
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の運営業務でこれまで担当したことがなかったものが多くあったため,その対応に時間を拘束され,出張に行く機会が少なくなった.ブロディ曲線の研究を論文としてまとめ上げるのに集中した影響も大きい.2024年度はこの研究成果を発表するためにより積極的に出張したいと考えている.またパソコン関連品も必要なものが出てくる様子なので,その購入にも充てたい.
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