研究課題/領域番号 |
21K03228
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安藤 直也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50359965)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 4次元ニュートラル空間形 / 時間的曲面 / ツイスター・リフト / パラ正則4次微分 / 法接続 / 4次元Minkowski空間 / 光錐 / SO(3,1)軌道 |
研究実績の概要 |
4次元ニュートラル空間形内の時間的曲面で平均曲率ベクトルが零のものを考える. 両方の時間的ツイスター・リフトの共変微分が零または光的であることは, 誘導計量の曲率Kが空間の一定断面曲率L_0に等しいことと同値であることがわかった. さらにこの条件は, 曲面上のパラ正則4次微分Qが零またはナルでありかつ法接続が平坦であることと同値であることがわかった. 関連して, 次の二つを示した: (i) Qが零またはナルであることは, ある時間的ツイスター・リフトの共変微分が零または光的であることと同値であり, さらにこれらを満たしかつKがL_0に等しくない曲面が存在する; (ii) 法接続が平坦でありかつKがL_0に等しくない曲面が存在する. 4次元Minkowski空間の2重外積空間の光錐内のSO(3,1)軌道は光錐の超曲面である. SO(3,1)軌道は次の(i), (ii)のいずれかを満たすことがわかった: (i) 誘導計量はニュートラルである; (ii) ある2次元分布が存在し, 誘導計量はその上で退化する. (i)を満たす軌道はある標準的なものと相似であることがわかった. SO(3,1)軌道の1点でのSO(3,1)の固定部分群および光錐のr-sliceとSO(3,1)軌道の共通部分を調べ, これらに(i)を満たす軌道と(ii)を満たす軌道の違いが現れていることがわかった. 2次元トーラス上の階数4の向きづけられた (正定値)計量ベクトル束のツイスター空間の水平性がファイバーのある部分集合を定める. この集合が有限の場合はSO(3)の有限部分群の観点で既に調べられている (Ando-Kihara). 今年度, この集合が無限の場合のうち, 先行結果に由来するものを調べ, この集合はファイバーの可算稠密部分集合であることがわかった (米崎杏莉氏 (熊本大学)との共同研究による).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず4次元ニュートラル空間形内の時間的曲面については, 両方の時間的ツイスター・リフトの共変微分が零または光的であるものについて今回さらに踏み込んで調べることができた. その結果, 法接続の平坦性の観点で, 空間がRiemann, Lorentzまたはニュートラルで曲面が空間的または時間的である場合を相互に比較しながら体系的な理解を目指すという新たな目標を得た. これは少なくとも研究が進展していることを意味し, 当初の計画を超えた展望すら得られているとも言える. また4次元Minkowski空間の2重外積空間の光錐内のSO(3,1)軌道は以前の研究で現れたが, Lie群の作用という観点を直視し自分の研究に取り込む必要を感じたため, 今年度の研究が行われた. 私の研究においてLie群と関わることはもはや不可避であり, 今後はLie群に関する議論を積極的に行うつもりである. この方面への研究は私にとっては新しいものであり, 当初の計画を超えた状況に遭遇していると言える. 米崎氏との共同研究において調べたツイスター空間のファイバーの部分集合が無限の場合について, それが稠密である可能性を想起することはできても, 実際にそのことを示すのは容易とは思えない. しかし, 米崎氏はある場合についてC言語による数値計算を行うことで, 稠密であることを示すための重要な手掛かりを得た. この手掛かりに基づく稠密性の証明には, あるSO(3)の元が与える回転の角度が円周率の無理数倍であることを示す議論があるが, このような議論をトーラス上のツイスター空間の水平性に関して全く想定していなかった. しかし, こうした議論を経験したことにより, 今までに考えもしなかった論点や展望を得た. 以上により, 明らかに当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも記したとおり, 4次元空間形内の曲面については, 空間がRiemann, Lorentzまたはニュートラルで曲面が空間的または時間的である場合を相互に比較しながら体系的な理解を目指す. これは, 今回の研究で法接続の平坦性が論点になったからである. 今までに知られている結果も含む理解を構築したい. 4次元Minkowski空間の2重外積空間の光錐内のSO(3,1)軌道について考えるとき, まずSO(3,1)からSO(3,3)への準同型が定められている. 一般にSO(3,1)からSO(3,3)への準同型を調べ, 今回の準同型についての理解を深めたい. またSO(3,1)をSO(p,q)として議論を一般化することを検討したい. トーラス上のツイスター空間の水平性については, 主に二つの方向に研究を進めることが考えられる. 一つは今回得られた結果を可能な限り一般化することである. このときSO(3)の二つの元が与える回転軸の間の角度および二つの回転の角度についてより一般のものを考えることになる. あまりにも多くの場合が考えられるが, 実数の代数的性質をより詳しく見る必要があると考えている. もう一つはトーラス上の階数4の向きづけられた計量ベクトル束Eの接続の分類である. ベクトル束Eの接続がツイスター空間の接続を与える. 以上ではツイスター空間を一つだけ考えていたが, もう一つも考え, ベクトル束Eの接続を二つのツイスター空間の接続の組み合わせと捉えることで, Eの接続の分類の可能性を検討したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額を発生させた理由は、次年度およびその次の年度の旅費 (特に国外)に備えるためである。
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