研究課題/領域番号 |
21K03251
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
金信 泰造 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (00152819)
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研究分担者 |
角 俊雄 九州大学, 基幹教育院, 教授 (50258513)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 結び目 / リボン結び目 / 対称和 / 対称同値 / refined Jones 多項式 |
研究実績の概要 |
金信は1984年にJones多項式,および,HOMFLYPT多項式が同じ無限個の1次元結び目族を構成した.これらの結び目は樹下と寺阪による対称和とよばれる構成法で得られる1次元リボン結び目でもある.Lammはすべての1次元リボン結び目が対称和のかたちで表されるか,という問題を提起し,12交点以下の1次元リボン結び目を対称和図式(対称和表示で表された図式)で表示することを試みた論文を発表している.それには多くの対称和で表された1次元リボン結び目の族があげられている.上記の金信が構成した無限族も含まれる.また,EisermannとLammは,対称和図式の間に対称同値とよばれる同値関係を定義した.Lammは,対称同値の不変量としてrefined Jones多項式を定義し,これを利用して対称同値でない2つの対称和図式で著された1次元リボン結び目の例を与えた.さらに,CollariとLiscaは対称同値のあらたな不変量や性質を与えてrefined Jones多項式では対称同値性を判別できなかった対称和図式が対称同値でないことを示した.また,田中利文も対称同値のあらたな不変量を与えている.
金信は大阪市立大学大学院修士課程の吉川修平との共同研究で,Lamm が与えた対称和図式の無限列の1つを調査して,その無限列に含まれる対称同値でない2個のリボン結び目の組からなる2つの無限列を発見した.このうちの1つの無限列は refined Jones多項式で対称同値でないことが示され,もう1つの無限列はrefined Jones多項式や田中利文の不変量では判別できず,CollariとLiscaの方法を適用することで対称同値でないことが示された.
これとは別に,研究分担者の角俊雄との共同研究で,2個のフュージョン数1の2次元リボン結び目からなる無限列を構成し,その分類の研究をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『補助事業期間中の研究実施計画』として大きく5点をあげた.2021年度はそのうちで,(1) 小さい2次元リボン結び目の数え上げとその分類.(5) 2次元リボン結び目の切り口となる1次元リボン結び目の多項式不変量による分類の研究.に関する研究において成果があがった.すなわち,(1)に関しては,同じ結び目群をもつ2個の2次元リボン結び目の無限列の分類に成功した.また,(5)に関して,2次元リボン結び目の切り口となる1次元リボン結び目のうちで,対称和の同値類である対称同値に関する研究において成果があがった.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に掲げていた次の5項目に沿って研究を進めたい.(1) 小さい2次元リボン結び目の数え上げとその分類.(2) フュージョン数が1の2次元リボン結び目の分類.(3) 2次元リボン結び目の半順序の研究.(4) 2次元リボン結び目のファイバー性の研究.(5) 2次元リボン結び目の切り口となる1次元リボン結び目の多項式不変量による分類の研究.
特に,(1)については,フュージョン数1,長さ6以下については数え上げと分類が完了し,高橋功多との共著論文も出版された.また,フュージョン数1,長さ7の数え上げと分類は2021年度に完了しており,これを整理して,まとめる作業が残っている.(5)については,Lammが与えた対称和で表された1次元リボン結び目の表が興味深く,多項式不変量によるこれらの分類の研究を2020年度に開始したが,この継続をおこないたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため研究集会の多くが遠隔開催となった.2022年度は,研究協力者,関連する研究をおこなっている大学院生も含め,可能な限り研究会等に出席する予定である.また,コンピュータ等の情報機器の整備もおこないたいと考えているので,その費用も必要となる.
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