研究実績の概要 |
当研究の目的として以下の5項目のうちで,(3) 2次元リボン結び目群の間の全射準同型の研究.(5) 2次元リボン結び目の切り口となる1次元リボン結び目の多項式不変量による分類の研究.について成果を得た. (注意.これまでは, (3) 2次元リボン結び目の半順序の研究.としてきた.古典的結び目では,結び目群の間の全射準同型の存在により半順序を定義できるが,2次元結び目では同様に半順序が定義できるかどうか未解決なので,今後はこのように改める.)
(3) フュージョン数が1でリボン交点数が4以下の2次元リボン結び目121個の結び目群の間の全射準同型の存在を調べた.全部で14,520の結び目群の組を調べた.その結果,27組について全射準同型が存在し,5組が不明,残りは存在しないことがわかった.方法は以下の通り.まず,Alexander多項式を比較することにより14,159組について全射準同型が存在しないことがわかる.次に,各組の結び目群からのSL(2,5)表現を求めて,その固有値,ねじれAlexander多項式を比較することで291組について全射準同型が存在しないことがわかる.同様のことを,SL(2,7), SL(2,8), SL(2,9), SL(2,11), SL(2,23), SL(3,3), SL(3,5)表現でおこなうと,34組が残る.そのうちの2組については交換子部分群の考察(ファイバー性を調べる)から全射準同型が存在しないことがわかる.残りの32組のうちの27組について全射準同型の構成に成功したが,5組については不明である.
(5)の研究から派生した成果として,2つの2本橋結び目のJones多項式の積の形のJones多項式をもつ2本橋結び目の無限族を発見した.HOMFLYPT多項式についても同様の例を発見した.
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