研究実績の概要 |
5点距離空間がCAT(0)空間へ距離を保って埋め込み可能であることは, 任意の4点間の距離がある不等式の族を満たすということにより特徴づけられることが研究代表者により証明されているが, 6点以上を含む距離空間に対しては, 任意の4点間の距離がその不等式の族を満たすにも関わらず, いかなるCAT(0)空間へも距離を保って埋め込むことができないものが存在することが, N. Lebedeva氏によって証明されている. 当該年度中, 研究代表者は「任意の4点間の距離が上記の不等式族を満たす」という事実が導くCAT(0)空間のいくつかの性質を新たに特定した. また, 6点以上の距離空間がCAT(0)空間へ距離を保って埋め込み可能であるために必要な, 上記の族に含まれるものとは異なる新たな不等式について, いくつかの予想をたて, それらの解決を試みた. さらに, これらの問題について関連する研究者と議論を行うために, 非公開の研究セミナーを運営し, 他の研究者とも継続的に議論を行ってきた. その結果, 当初に計画していた本研究の研究手法に幾つかの予期せぬ困難があることを発見するとともに, CAT(0)空間の“上記の不等式族では捉え切ることができない性質”に関連して, 本研究の目的の部分的達成に向けた新たなアプローチ方法を見出すことができた. しかし, 現段階においては, 得られた研究成果を公に発表するには至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の中心的課題である6点以上を含む距離空間がCAT(0)空間へ距離を保って埋め込み可能であることの特徴づけに関して, 当初に計画していたアプローチ方法にいくつかの予期せぬ技術的な困難が見出されたため, 困難の解決方法を模索するため, 情報を収集し, 関連する研究に対する理解を深めることに多くの時間を費やすこととなったためと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度中の研究では, 当初に計画していた研究手法におけるいくつかの技術的な困難が明確となった一方で, 関連する多くの研究についての情報を得ることができた. 2022年度以降は, 基本的には, 技術的困難の解決を行いながら, 研究目的の達成に向けて, 当初の計画に沿って研究を進めていくつもりであるが, 2021年度中に進展があった「4点間の距離に関する不等式族では捉え切ることができないCAT(0)空間の性質」に関する研究は優先的に進めていきたいと考えている. また, 2021年度は, 新型コロナウィルスの流行に伴い, 計画していた本研究に関する出張のほとんどを中止せざるを得ない状況であったが, 2022年度以降は, 少なくとも招待を受けた研究イベントに関しては, 状況・参加方法をよく見定めた上で, できるだけ参加をし, 国内外の研究者との情報交換を心がけて, 研究目的の達成を目指したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中は, 新型コロナウィルスの流行に伴い, 予定していた出張の多くを行うことができず, そのため, 次年度使用額が多くなった. 2022年度には, 招待を受けている研究会への出席と併せて, 2週間ほどフィールズ研究所(カナダ)に滞在する計画を立てているので, 次年度使用額はその出張旅費としたいと考えている.
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