研究課題/領域番号 |
21K03264
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
筧 知之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70231248)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 合成積作用素 / 対称空間 / 幾何解析 / 逆問題 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主に非コンパクト対称空間上の合成積作用素について研究を行った。尚、本研究は、ゴンザレス教授(タフツ大学)、クリステンセン教授(コルゲート大学)、ワン氏(タフツ大学博士課程大学院生)との共同研究であるが、コロナ禍のため、オンラインによる研究を行った。設定は以下の通りである。X=G/Kを非コンパクト対称空間とし、μをX上のコンパクト台を持つ超関数とする。このとき、X上の滑らかな関数をX上の滑らかな関数に移す写像 f -> f*μ が定まる。ここで、*は対称空間上の合成積を表し、一般には非可換である。この意味で合成積作用を考える。尚、本研究は、2017年度から行っている別の研究課題「対称空間上のシュレディンガー方程式の幾何解析」(研究課題/領域番号17K05328)と密接に関係していることを付記しておく。合成積作用素の重要な例として平均値作用素というものがあり、様々な微分方程式の基本解の構成に本質的な役割を果たしている。そこで、2021年度は上記3氏と共同で、アスギアソンの平均値定理の問題に取り組んだ。これは対称空間の幾何解析的性質を調べるうえで重要な多重時間波動方程式系とも関係している。X×X上の関数に対して、アスギアソンの平均値定理が成り立つこととX×X上のある種の不変微分方程式を満たすことが同値であると予想されており、ヘルガソンによってかなりのところまで証明されている。我々は、ヘルマンダーの方法を用いてこの問題に取り組んだが、多変数関数論に関わる部分である種の困難さにぶつかり、研究は難航している。また、これとは別に、非コンパクト対称空間上の合成積作用素の全射性の証明にも取り組んだ。すでに特別な仮定の下で全射性を証明しているが、それを一般の場合に証明することが目標である。こちらについても、研究初年度ということもあり、研究は難航している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
部分的な結果は得られているが、当初、期待していたほどに成果が上がっていないため。
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今後の研究の推進方策 |
オンラインでの共同研究では限界があるため、対面での共同研究が可能かどうかを検討する。また、研究の方法、および、研究目標の見直しも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始前は、コロナ禍の終息を期待し、外国出張、国内出張、および、本研究の研究代表者による研究集会の開催を計画していたが、コロナ禍が長引いたいるため、それらすべてを断念せざるを得なくなった。そのために、かなりの繰越金が生じてしまった。さらに、本研究の研究代表者は、所属組織において学類長の立場にあり、コロナ禍での予想外の対応も含めて、研究に充てる時間を管理業務に回さざるを得なくなった。このことも繰越金が生じた要因となっている。次年度は、研究集会や出張について大幅な見直しを行う。ただし、これは出張等を全くしないということではなく、コロナ禍での出張や研究集会開催について有効な方法を探るということである。
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