研究実績の概要 |
多変数の関数の級数計算は計算量が大であり, 微分方程式を用いた数値計算方法はある程度の精度をたもちつつ高速に計算する手法としてすぐれているが, 誤差による発散など種々の困難があるのでその回避方法を研究した. 具体的には, MIMO WiFi システムの失敗確率の計算に出現する特殊関数 H^k_n(x,y)(合流型超幾何関数を含む積分で表現できる)の, 微分方程式を用いた大域的数値計算法を与えた. 数値解が嘘の解とならないように適切なフィルターを設定する手法が有効であることを示した. また, 多変数正規分布を用いて定義されるあるランダム多様体のEuler数の期待値がみたす10階の常微分方程式の数値解を安定的に求める方法を考察した. 基底関数の係数を最適化問題を解くことにより求める手法が有効であることを示した. 以上の結果のプレプリントを https://arxiv.org/abs/2111.10947 で公開している. またこれらの手法を実装したソフトウエアを公開している. Feynman摂動展開にあらわれる積分を次元正則化した一般化 Feynman 積分は GKZ 超幾何関数で表現できる. GKZ超幾何関数はholonomic系を満たしその方程式の具体形が知られているが, その方程式系を付随する全微分方程式系(Pfaffian方程式)の具体形は知られていない. さまざまな 1-loop diagram に付随する一般化 Feynman 積分のみたす全微分方程式(Pfaffian方程式)を効率的に求める手法---Macaulay matrix の方法を研究した. この方法ではPfaffian方程式の係数の有理式が計算量おおきすぎて計算できなくても評価したい点を与えれば係数行列の数値を決定できる. この方法は漸化式による値の計算や微分方程式の数値解法を適用した積分の計算にも利用できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に挙げた問題2: 【微分方程式を活用した大域数値解析(HGMなど)を進展させる. パラメーターや変数の値に応じた多様なアプローチを考える必要がある. この積分は holonomic な線形微分方程式系 (A-超幾何系)を満たす. 多変数の関数の級数計算は計算量が大であり, 微分方程式を用いた数値計算方法はある程度の精度をたもちつつ高速に計算する手法としてすぐれているが, 誤差による発散など種々の困難があるのでその回避方法を研究する必要がある.】については本年度の成果として述べているように数値解が嘘の解とならないように適切なフィルターを設定する手法が有効であることを示せた.
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