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2021 年度 実施状況報告書

タイヒミュラー・モジュラー群の有理変換群への表現の力学系およびクライン群への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K03271
研究機関島根大学

研究代表者

中西 敏浩  島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (00172354)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードタイヒミュラー空間 / 離散群 / 双曲幾何学 / リーマン面 / 写像類群
研究実績の概要

SL(2,C)の離散部分群であるクライン群の研究を行った。とくに余コンパクト・クライン群,すなわち,その3次元双曲空間への作用の商空間が閉多様体になるクライン群の具体例の構成を行った。我々の構成法は閉曲面のマッピング・トーラスは,その貼り合わせ写像が擬アノソフ的であるとき,双曲構造を許容するというサーストンの定理に基づくものである。従来の研究で種数が2以上の閉曲面の曲面群のSL(2,C)表現の空間上にある座標系を導入すれば,その上に作用する写像類群が有理変換群として表現できることがわかっていた。

サーストンの定理に依拠して双曲多様体を見つけることは擬アノソフ的写像類の不動点を見つけることに還元するが,次の問題を同時に扱う必要がある:(1) 与えられた写像類が擬アノソフ的であるかどうかを判定する,(2) 不動点を見つけるために連立代数方程式を解く。代数方程式の解というだけでは不動点は複数個存在する。(3) 離散群に対応する不動点を見つける。いずれも難しい問題であるが,とくに(3),すなわちSL(2,C)の部分群の離散判定法は現時点では,与えられた群ごとにアドホックに対処するしかなく,とくに困難である。

当該年度実施した研究の主結果は,タイヒミュラー空間の点としての種数2の曲面群のSL(2,C)行列表示を得たことである。行列の成分はすべてタイヒミュラー空間のパラメータに関して有理関数である。この結果を援用し,上で述べたレシピにしたがって円周上のファイバー空間である双曲3次元多様体でファイバーが種数2の閉曲面である例を構成した。離散性の判定はポアンカレの多面体定理を用いた。連立代数方程式の解を見つける作業,余コンパクト・クライン群の候補となる群の元のアイソメトリック・スフェアの描画には膨大な計算が必要であり,計算機や数式処理ソフトMathematicaなどを研究の中で多用した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タイヒミュラー空間に作用する写像類の力学系を利用して位相的有限型曲面をファイバーにもつ円周上のファイバー空間の構造を持つ有限余体積の双曲3次元多様体を具体的に見つける研究を行っている。現在は種数2の閉曲面をファイバーにもつ円周上のファイバー空間の構造を持つ双曲3次元多様体の一例を構成する研究を行っている。研究は完成に近づいており,順調に研究が進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

科学研究費補助金で数式処理ソフト Wolfram Mathematica を継続して購入できたので,有限体積な双曲3次元多様体の具体例の構成をする。閉双曲多様体の例はまだ少ないので,そうした具体例の構成は価値があると思われる。これまでの研究の過程でMathematicaを用いたさまざまな関数やプログラムが蓄積できたので,より研究が加速すること,および,より組織的に体系化した研究ができることを期待している。
コロナ禍の影響でほとんど旅費が使えない状況であった。計画していた松江でのモジュライ空間に関する国際研究集会も再延期せざるを得なかった。現時点ではコロナウィルス感染症の終息は見えず,国際情勢も不安定であるが,旅行が可能になれば,外国旅費として使用して国内外の研究者と共同研究のための研究連絡を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍の影響でほとんど旅費が使えない状況であった。計画していた松江でのモジュライ空間に関する国際研究集会も再延期せざるを得なかった。現時点ではコロナウィルス感染症の終息は見えず,国際情勢も不安定であるが,海外への往来が可能になれば,外国旅費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Teichm?ller space and the mapping class group of the twice punctured torus2021

    • 著者名/発表者名
      NAKANISHI Toshihiro
    • 雑誌名

      Journal of the Mathematical Society of Japan

      巻: 73 ページ: 1221-1252

    • DOI

      10.2969/jmsj/84998499

    • 査読あり
  • [学会発表] いくつかのクライン群の例について2021

    • 著者名/発表者名
      中西敏浩
    • 学会等名
      Workshop on Potential Theory and Complex Analysis
    • 招待講演
  • [学会発表] 種数2の閉曲面のタイヒミュラー空間とクライン群の例について2021

    • 著者名/発表者名
      中西敏浩
    • 学会等名
      函数論シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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