研究課題/領域番号 |
21K03276
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中村 周 学習院大学, 理学部, 教授 (50183520)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シュレディンガー作用素 / スペクトル理論 / 散乱理論 / 超局所解析 / 半古典解析 |
研究実績の概要 |
超局所解析の手法を用いた、シュレディンガー方程式を中心とする量子力学の方程式、作用素に関する研究を行った。具体的な研究成果について、以下に概略を述べる。 (a) 長距離摂動を持つシュレディンガー型作用素の散乱行列の超局所解析については、広いクラスの作用素、摂動について、修正散乱行列が、古典力学的な散乱写像の量子化と解釈できるフーリエ積分作用素として表現する研究を完成し、学術誌:Analysis & PDEに出版が受理された。 (b) 非コンパクト領域上の半古典測度を用いた、調和振動子型のシュレディンガー方程式に関する観測性評価については、F. Macia(マドリード工科大学)との共同研究はほぼ完成しているが、コロナ禍の影響もあり、論文の完成、出版には至っていない。この研究については、さらに研究を継続していく。一方、ユークリッド空間上の自由なシュレディンガー方程式、あるいは類似の方程式に関する観測性評価に関する、F. Macia、三上渓太(理研)との共同研究については、thick setなどの新たな概念を用いた研究動向の進展に鑑み、半古典測度ではなく、Egorovの定理などの半古典解析の手法を用いた観測性評価の証明に向けて、研究が進展している。研究計画年度内には研究成果を発表できる予定である。 (c) 離散シュレディンガー作用素の連続極限における連続シュレディンガー作用素への(ノルム・レゾルベント)収束の研究に関しては、只野之英(東京理科大)との共同研究が完成し、Journal of Spectral Theoryに出版された(「研究発表」参照)。また、量子グラフ作用素の連続極限に関する類似の研究成果については、P. Exner(チェコ・科学アカデミー)、只野之英氏との共同研究が完成し、学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者独自の研究活動を中心にした研究計画であるので、コロナ禍による研究活動の制限は、研究活動を大きく制限しているとは言えず、おおむね研究計画は順調に進行している。それでも、対面の研究交流が大きく制限されていることは、共同研究の進行の妨げにはなっており、またオンライン教育の要請を含めて、研究代表者の教育負担の増大による負担増は大きく、研究活動を制限する要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、研究計画に沿って、研究代表者を中心とした研究活動を継続していく方針に変更はない。ただし、研究費の執行の大きな部分を占める、海外渡航費に関しては、社会状況に依存する部分が大きく、未確定の部分が大きい。 現在進行中の研究課題としては、非楕円型作用素に対する本質的自己共役性の研究を、平良晃一(立命館大学)と研究進行中であり、研究計画年度内に新たな研究結果が発表できる予定である。また、「研究実績」の項に述べたように、観測性評価の研究が進行中であり、研究年度内の完成を目指している。これは国際共同研究でもあり、社会状況が許せば、スペインに渡航して共同研究を行いたい。それ以外の研究課題についても、順次研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、予算の大部分を占める海外出張旅費(海外研究者招聘旅費を含む)、国内出張旅費の執行が全く行われず、計画予算を用いることが無かった。次年度以降において、それを補う形で海外・国内旅費を計画以上に用いる事を希望している。社会状況によっては、それが実現できない事をもありうるが、その場合はオンラインのコミュニケーションの質の改善のための情報機器の購入、必要なサービスの購入、などの形で予算を執行し、研究計画の実現に役立てる事を検討している。
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