研究課題/領域番号 |
21K03293
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
森藤 紳哉 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30273832)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | two-microlocal space / ベゾフ空間 / ウェーブレット / Weyl calculus / 不確定性関数 |
研究実績の概要 |
本研究のまず第一の目的は,関数の各点ごとの特異性を調べるのに役立つtwo-microlocal spaceの研究を推し進めることである.第二は,リジレット解析を推し進めることであり,超平面の方向を絞った上でリジレット解析を行い,更にtwo-microlocal spaceの考え方との比較検討を行う.第三に,第一・第二の研究をより複雑な特異性の解析にも対応出来る形にまで一般化することである. これまで,関数の各点ごとの特異性を調べるのに役立つtwo-microlocal spaceの研究を推し進めることがかなり出来た.さらに,リジレット解析を推し進め,two-microlocal spaceの考え方との比較検討を,多くの具体例を用いて行うことが出来た. そもそもベゾフ空間の元の特徴付けは,展開されたウェーブレット係数の列をベゾフ的に測ることによって与えられる.従って,その測り方を上手く一般化した条件を考えることによって,より一般の興味深い関数空間が定義され,しかも,この関数空間の元はシンプルな良い分解をもつことが予想される.その際,拡張された分だけの特異性を表現する「剰余項」が関数の分解に現われる筈だが,これこそがtwo-microlocal estimateの真意である.今回は,出来るだけ考え方を一般的にして,Weyl calculusに現われる一般的な不確定性関数を用いてtwo-microlocal spaceを考え,リジレット解析も推し進め,two-microlocal spaceの考え方との比較検討を多くの具体例を用いて行った上で,より複雑な特異性の解析にも対応出来る形にまで一般化する準備的研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関数の各点ごとの特異性を調べるのに役立つtwo-microlocal spaceの研究を推し進めたこと(1年目),リジレット解析の研究,及びtwo-microlocal spaceの考え方との比較検討を多くの具体例を用いて行ったこと(2年目),これらを踏まえ,より複雑な特異性の解析にも対応出来る形にまで一般化する準備的研究を行うことが出来た.これが「順調な進展」の大きな理由である. そもそもベゾフ空間の元の特徴付けは,展開されたウェーブレット係数の列をベゾフ的に測ることによって与えられる.従って,その測り方を上手く一般化した条件を考えることによって,より一般の興味深い関数空間が定義され,しかも,この関数空間の元はシンプルな良い分解をもつことが予想される.その際,拡張された分だけの特異性を表現する「剰余項」が関数の分解に現われる筈だが,これこそがtwo-microlocal estimateの真意である. 当初実施計画の通り,出来るだけ考え方を一般的にして,Weyl calculusに現われる一般的な不確定性関数を用いてtwo-microlocalspaceを考え,リジレット解析も推し進め, two-microlocal spaceの考え方との比較検討を多くの具体例を用いて行った上で,今回も順調に研究を行うことが出来た.すなわち,より複雑な特異性の解析にも対応出来る形にまで一般化する準備的研究を行うことが出来たのである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,更により複雑な特異性の解析にも対応出来る形にまで一般化された問題の研究を推し進めることをより本格的に考える.具体的には,カンデス・ドノホのリジレット解析の超局所化を更に推し進め,関数のラドン変換から見た特異性を取り出すことを考える.即ち,ラドン変換を方向毎に計算することによってカンデス・ドノホのリジレット解析の超局所化を更に進めることであり,同時に,リジレット空間の理論をベゾフ空間の理論と同様に精緻に展開することである.その結果,より複雑な特異性も表現可能な「two-microlocal ridgelet space」のような関数空間論が実現され,これまでのtwo-microlocal estimateとの比較検討も見通しの良いものになる筈である.各点毎の特異性解析であるウェーブレット解析を発展させて,より高次元の部分空間に沿った特異性解析や曲線・曲面に沿った特異性解析まで広く考えることも出来る.これまでと同様に,特に,カンデスによるカーブレット,Helgasonによるグラスマン多様体上のラドン変換,Bahouri--Fermanian-Kammerer--GallagherによるHeisenberg群上のWeyl calculusを参照しつつ,これまでの研究の更なる拡張を考える. コロナの状況による制限的な社会的生活も殆ど過去のものとなり,今後の研究者間の交流は主に国内・外国出張となるであろう.研究集会への参加・発表・情報収集を行い,多くの国内外の研究者と討論し,研究遂行の糧としたい.
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