研究課題/領域番号 |
21K03298
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松本 裕行 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00190538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拡散過程 / 擬等角写像 / 正定値行列 / 対称空間 / 生成作用素 |
研究実績の概要 |
研究対象は大きく分けて2つである.第1は,正定値行列の空間上のラプラス-ベルトラミ作用素を対応する拡散過程を用いて進めることである.第2は,一般の2次元拡散過程に関する研究を進めることである. 正定値行列の空間に関しては,古くから知られていたラプラス-ベルトラミ作用素の岩澤座標による表現で理解されていなかった部分を,低次元の表現から帰納的に見直すことによって整理した.このことにより,対応する拡散過程を確率微分方程式を用いて構成すると分かりやすい表現が得られることを発見した.固有値過程に関しては,Norrisらによる結果を最大固有値,最小固有値に関して拡張し,行列式または固有値の積が簡明なものであることを示した. 2次元拡散過程に関しては,生成作用素があるリーマン計量に関するラプラス-ベルトラミ作用素である場合,またはその拡張と考えられる場合には,標準ウィナー過程のランダム時間変更で表現できることが擬微分作用素の理論を用いると分かる.生成作用素の係数が滑らかな関数の場合は,標準ウィナー過程のランダム時間変更で与えられる拡散過程の生成作用素は,あるリーマン計量に対応するラプラス-ベルトラミ作用素であることも証明できている意味では,必要十分な結論が得られている.しかし1次元拡散過程のように測度を基礎にした議論にはほど遠い結論であるし,擬微分作用素の理論は係数の滑らかさを必要としない.この差を埋めるべく,努力しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正定値行列の空間上の解析では,低次元の場合の詳細な計算が役に立ち,次元に関する帰納的な議論が予想以上にうまくいったと考えている.2次行列の場合は,ポアンカレの上半平面との対応も具体的に与えたので,セルバーグの積公式の考察へ進みたい. 一方,一般の2次元拡散過程の研究は,生成作用素が滑らかな係数をもつ場合で止まっている.拡散過程が標準ウィナー過程の時間変更で与えられると仮定したときの議論でコーシー-リーマンの微分方程式を用いるためである.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果の応用として,2次正定値行列の空間上のセルバーグ積公式を研究したい.双曲平面と半直線の歪積との同型写像が具体的に得られているので,双曲辺面上の積公式から得られることがあると考えている. 2次元拡散過程に関しては,コーシー-リーマンの微分方程式を用いる際に,滑らかさに関する仮定がどの程度緩められるか,古典的な結果を十分理解できるように文献にあたりながら研究を進める必要があると思っている.また,具体的な例を集める必要もあると思われる.
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