研究課題/領域番号 |
21K03302
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
梁 松 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60324399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 拡散過程 / 強ポテンシャル / 極限過程 |
研究実績の概要 |
「拡散過程の古典力学系による導出」という研究課題において、関連性の高い問題として、強いポテンシャル関数を持つ確率微分方程式の解の極限挙動を調べるという問題を研究した。具体的には、粒子の位置と速度はハミルトニアン系に抵抗力及びランダム性の効果を入れることにより与えられる確率微分方程式で記述されるモデルに対して、ポテンシャル関数は single-wellである場合を考え、ポテンシャル項の係数が無限大に発散するとき、粒子の挙動の極限を調べるという研究を行った。 この場合、粒子の総エネルギーを考えれば分かるように、粒子がポテンシャル関数の吸収域に入った途端、粒子の速度は非常に速くなる。よって、ポテンシャル項の係数が無限大に発散するとき、粒子の位置を表す確率過程そのものの極限を考えるのは無意味であり、その代わりに、粒子の位置の分布を考える必要がある。1次元の場合についてこの問題は解決されているが、多次元の場合についてはまだ解決されていない。 今年度は、上述のように、多次元において、強いポテンシャルを持つ場合の極限挙動を研究した。特に、多次元の場合、1次元の場合とは違い、粒子位置の分布そのものを考えるのではなく、位置を原点からの距離及び方向という二つの成分に分解し、それぞれを考える必要があるので、さらに精密な評価が必要である。今年度は、原点からの距離を表す確率過程の具体的な式を特定し、その挙動を調べるのに適切な停止時刻を導入することにより、具体的な評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定として、拡散過程の古典力学系による導出という研究課題を予定していたが、今年度の研究内容も当該研究を遂行する上で重要なテーマの一つであり、粒子の原点からの距離を表す確率過程の具体的な評価を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定としては、まず今年度得られた評価を用いて、粒子の位置の方向を表す確率過程の極限過程である拡散過程を求めることにより、強ポテンシャルを持つ確率微分方程式の解の極限挙動に関する研究を完成させる。その後、予定通り、粒子間相互作用は斥力で与えられる古典力学系を考え、より現実と合う様、色々な特異性を持つモデルを議論し、当該研究を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で、多くの研究集会が中止または開催方法の変更があった。次年度はこの研究を完成するために、必要に応じて情報収集を行うと同時に研究資料を調達することを予定している。
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