研究課題/領域番号 |
21K03309
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
深尾 武史 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00390469)
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研究分担者 |
赤川 佳穂 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20881650)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発展方程式 / 動的境界条件 / カーン・ヒリアード方程式 / 粘性消滅法 / 境界拡散 |
研究実績の概要 |
境界拡散項を含む動的境界条件下でのカーン・ヒリアード方程式には大きく2つのタイプ(GMSモデル(2011)、LWモデル(2019))があり、それぞれの問題とそれらをつなぐ中間に位置する問題も近年盛んに研究されている。 まずは2011年のGMSモデルについて境界拡散に近似変数を乗じた問題をこれまでの研究結果から考察し、その近似変数を0に収束させる粘性消滅法によって、GMSモデルの収束先として境界上で4階から2階放物型へ、さらに単調項のみの非線形拡散ではなく非単調項も含むような非線形拡散境界方程式が考察でき、その適切性が証明できることが分かった。まず、その一様評価にはGMSモデルの適切性を論じた2015年の結果が適応できる。また、境界拡散の欠落から解の正則性、より具体的に境界方程式の二重井戸型ポテンシャルの微分項、特に単調項の意味づけを弱くする必要があることが分かった。一方で多価性は維持できるので劣微分作用素による表現は有効である。付随してその項表現を強めるためには領域内部と境界の単調項に同次の増大条件を課せばよいことも明らかになった。また、その際の誤差評価も合わせて得ることができた。 動的境界条件を数値的に取り扱うために、その精度向上に向けて従来の構造保存数値計算スキームを改良した。具体的には離散エネルギーを前進差分だけでなく後退差分も含みその平均を取る形で用意し、それに付随する部分和分公式を示すことで、既存の結果と大きく異なることなく、適切性を論じることが可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的境界条件下でのカーン・ヒリアード方程式についてまずは最初に提唱された2011年のGMSモデルであれば適切性を論じるのに抽象発展方程式の枠組みできれいに収まることが知られていた。それは領域内部と境界の形式に対称性があるためであったが、境界拡散だけを消滅させるための一様評価も同様の手法に従えば得られることが予想通り確認され、研究の第1段階としておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性として、まずはGMSモデルで可能であった境界拡散の粘性消滅法がLWモデルにも適応可能か調べる。現在の予想として、GMSモデルと同様には行かず、LWモデルの適切性が得られている二重井戸型ポテンシャルの仮定をやや弱める必要があると見ている。この点を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で出張が全て不可能になったため、予定していた研究打ち合わせならびに学会等での講演を中止した。研究打ち合わせのためにオンラインミーティングのツールを整えることに置き換えたが、そこに差異が生じた。旅費として計画していた支出の残額は次年度以降に持ち越し、研究の進捗状況の遅れを出さないよう次年度に研究打ち合わせを増やす。
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