研究課題/領域番号 |
21K03310
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴田 徹太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90216010)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分岐問題 / 非線形固有値問題 / 漸近解析 / 逆分岐問題 |
研究実績の概要 |
本研究の今年度の目標は前年度の研究成果をふまえて、非線形楕円型方程式の分岐問題とそれに対応する逆問題を、主として常微分方程式論的手法を中心に解析を進めることである。ここで用いる手法はタイムマップ法と呼ばれる解析法を中心として、特殊関数論、変分法等を組み合わせて、考察する方程式の解や分岐曲線を精密に解析することである。様々な分野に出現する現象を解析するために導出された、非局所項を含む非線形微分方程式に関する解析法を前年度に開発したが、このアプローチをさらに発展させて、様々なキルヒホッフ関数をもつ非線形微分方程式の固有値問題の具体的な解の形状や分岐曲線の形状を導くことに成功した。特に、キルヒホッフ関数が畳み込みの形である方程式は、これまで考察してきた自励系の方程式とは異なり、非自励系の方程式となる。このような方程式を扱うにはこれまで有効であったタイムマップ法をさらに拡張する必要があった。そこで、考察する方程式に対応する非線形項にべき関数をもつ自励系の方程式の正値解の一意性を十分に活用して、複雑化した計算を実行することで解と分岐曲線の形状を精密に解析することに成功した。この方程式は様々な自然現象を記述するときに現れることが多く、幅広い分野での応用が期待できる。分岐曲線の大域的構造が考察する方程式の特徴を反映していることから、今後は得られた成果を偏微分方程式の解析法に拡張することを目指す。 また逆分岐問題に関しては 方程式に含まれる未知の非線形項がキルヒホッフ関数の場合の具体例を得ることができたので、これまで得られていた分岐曲線の漸近挙動から未知の非線形項を決定するという逆分岐問題の研究に対して新たな局面を切り開いたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究成果を踏まえ、さらに踏み込んだ非線形固有値問題を考察することができたことで、より広い方向への研究の発展が期待できることとなった。また、これまでは解析することが困難と考えられていた非自励系の方程式の精密解析に対するアプローチを開発することができるようになったため、今後のさらなる研究の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
最近の研究成果をふまえ、これまでに得られていた非局所項を持つ非線形常微分方程式の研究とアプローチが、領域が球対称である場合の偏微分方程式に関して適応可能になるような方向での研究を推進していく。このためには非自励系の非線形常微分方程式の固有値問題に対する新しい研究方法の開発と、タイムマップ法の改良を推し進めていく。
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