本研究の目的は気体星の流体力学的な内部構造および惑星大気の流体力学的運動に関して、特に重力により生じる真空境界と回転による効果に着目して、その数学的に厳密な解析を行うことであった。 そのため第3年度の令和5(2023)年度においては、(A)固体球の外部でその重力のもとで運動する大気、(S)自己重力のもとで運動する気体塊について、平衡解ないし回転する定常解からの摂動を支配する発展方程式の解析を行った。ただし、微小摂動を考えて線型近似の下で解析した。 (A)惑星大気の運動については、ひきつづき、解の微分可能性についての議論における自由境界に起因する困難について研究を進めて、ある程度の前進を得た。しかし、まだ決定的な結果は得られなかったので、さらに研究する必要がある。 (S)気体星の運動については、宇宙物理学で従来から行われてきた問題の定式化を数学的な立場から見直す必要に気づき、そのための基礎的な研究を行った。その結果、対象の気体に想定される状態方程式の如何、背景の定常解が順圧的か傾圧的かの違い、背景の定常解の微分回転の剛体回転からのずれの大きさなどが、考察すべき線型作用素の函数解析的特性、とくにスペクトルにたいしてどのように効果するかを解明できた。
|