研究課題/領域番号 |
21K03314
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
砂川 秀明 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80375394)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 弱消散構造 / 微分型非線形シュレディンガー方程式 |
研究実績の概要 |
本年度は Chunhua Li氏、西井良徳氏、佐川侑司氏と共同で、弱い消散構造を伴う非線形シュレディンガー方程式についての研究を行った。特に1次元ユークリッド空間において3次の微分型非線形項を伴う場合の初期値問題の解について、時刻無限大におけるL^2の意味での減衰の様子を明らかにすることが主目標である。解の大域存在を保証する構造条件(A)と、時刻無限大において解の漸近形に対数的な位相修正が生じるための構造条件 (A_0)、および非線形項が解に消散的に作用するための構造条件(A_+)の3つを比較したとき、通常のべき乗型非線形項の場合には(A)が満たされれば(A_0)または(A_+)のいずれかが満たされることは簡単に確認できるが、微分型非線形項の場合には「(A)は満たされるが(A_0)と(A_+)のいずれも満たされない」という中間的な場合があり、我々はこのような非線形項を「弱消散的」(weakly dissipative)と呼んで主たる考察対象としてきた。前年度の時点では、δを任意に小さい正の数として、解のL^2ノルムは log t の (-1/4+δ)乗のオーダーで上から評価されることまでは示されていたが、その最適性や下からの評価については全く未知であった。本年度はこの点について考察を進め、弱消散的な場合には log t の-1/4乗が最適なL^2減衰レートであることを証明することに成功した。この成果は“Upper and lower L^2-decay bounds for a class of derivative nonlinear Schrodinger equations”と題する論文にまとめられ、4人による共著として現在専門誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上に記した成果から判断して、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
非線形双曲型および分散型方程式に対する弱消散構造とその周辺についての、高周波漸近解析の方法に基づいた研究を継続する。また、国内および海外で行われる研究集会(遠隔開催も含む)に参加して成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も新型コロナウィルスの影響で研究集会やセミナーの多くが対面開催から遠隔開催へ切り替わったために次年度使用が生じた。今後の使用予定も新型コロナウィルスの影響に大きく依存するため未詳であるが、もし研究集会やセミナーが対面で開催されるならば成果発表や情報収集のための出張旅費として使用する予定である。一方、遠隔開催が続くようであれば、それに対応できる機材を充実させるために費用を使うことを考えている。
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