研究課題/領域番号 |
21K03317
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 教授 (60549749)
|
研究分担者 |
西 慧 京都産業大学, 理学部, 准教授 (40774253)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 非線形解析 / 変分問題 / 楕円型偏微分方程式 / 安定性解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、非線形シュレディンガー方程式における非局所的相互作用による定在波解の安定化に着目して、定在波の存在に関する閾値や定性的性質等を解析する。今年度の具体的な研究実績は以下の通りである。静岡大学の足達慎二氏と共に、ソボレフ優臨界であることを許す非線形項を持つ半線形シュレディンガー方程式を考察し、変分法を用いて正値解の存在を示した。この結果は学術雑誌「Journal of Mathematical Analysis and Applications」に掲載された。 さらに、足達氏と慶應大学の生駒典久氏との共同研究において、上記の論文でポテンシャルや非線形項に課していた条件を弱くすることに成功した。この研究成果については、学術雑誌に投稿中である。本研究で用いたアプリオリ評価やレベル集合の解析手法は、他の微分方程式の研究にも応用できると期待している。特に、非局所項方程式において、ある種の近似を行うと準線形方程式が得られることが知られているが、準線形項の制御に本研究で用いたアプリオリ評価を応用できると考えている。 他には、ボルドー大学のMathieu Colin氏と共に、2次元シュレディンガー・マックスウェル方程式の定常問題や非線形光学で現れる他の微分方程式系における定在波解の安定性に関する研究を行った。また、指導する大学院生と共に、Lotka-Volterra拡散競争方程式の進行波解の研究を行った。これらの研究については、未完成な部分もあるため、論文執筆にはまだ至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の全体的な目標は、非線形光学に現れる非局所的微分方程式に着目して、非局所項による定在波の安定化を理論的に解明することである。そのスタートラインとなるのが、これまでに行ってきた準線形シュレディンガー方程式やシュレディンガー・マックスウェル方程式の研究であり、これらの研究の未解決部分を解決し、解析手法や理論を発展させることが、本研究を進める上で重要となる。 国内の共同研究者の足達慎二とはオンラインで研究打ち合わせを行い、順調に共同研究を進めることが出来た。一方で、これまで海外の共同研究者とは、長期休暇中の出張で相手の大学に滞在し、そこで時間を掛けて研究打ち合わせを行い、帰国後に研究を完成させて学術論文を執筆するというスタイルを取ってきた。令和3年度はオンラインで研究打ち合わせを数回行ったものの、時差の関係等でそれほど回数を重ねられず、進展が思ったようには得られなかった。 また、予定されていた国際研究集会が延期となり、研究発表する機会も失われてしまった。以上の理由により、研究計画はやや遅れていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた結果を基に、非線形シュレディンガー方程式における非局所的相互作用による定在波解の安定化の研究を進める。今年度に引き続いて、足達慎二氏氏を研究協力者として研究を行う。本研究を推進するために、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。海外の共同研究者であるColin氏やPomponio氏とはメールを通じて連絡を取り合うが、出来れば彼らが所属する大学への渡航も行いたい。また、国内の研究集会にオンラインも含めて積極的に参加し、様々な研究者と積極的に情報交換を行う。同時に、KSU非線形解析セミナーを主催し、情報収集および共同研究のきっかけを作っていきたい。 また、研究代表者がこれまで行ってきた反応拡散系方程式や固有値最適化問題をより深く研究するために、今後は数値解析も積極的に取り入れる。そのために、研究分担者である京都産業大学の西慧氏や株式会社アイシンの井手貴範氏と微分方程式の数値解析に関する共同研究を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に開催が予定されていた「第13回 AIMS conference」が令和5年度に延期されることが決まり、海外出張の機会が1回減った。また、例年ならば2月の後半から3月前半にかけて、共同研究者がいるフランスやイタリアに海外出張を行っていたが、コロナの感染状況が思ったほどには改善されず渡航制限も変わらなかったため、出張を断念した。これらの理由によって、令和3年度の海外旅費が未使用となった。 令和4年度は渡航制限も段階的に解除され、コロナの感染状況も改善されると思われるので、早ければ夏頃から共同研究者の下を訪問したいと考えている。
|