研究課題/領域番号 |
21K03328
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
水町 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (60315827)
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研究分担者 |
山崎 陽平 九州大学, 数理学研究院, 助教 (70761493)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | KP-II方程式 / 多重線ソリトン / 線形安定性 / 中心安定多様体 / 非線形シュレディンガー方程式 |
研究実績の概要 |
水町は前年度に続きKP-II方程式の2線ソリトン解の線形安定性を研究した. 前年度には,線ソリトンの交叉角度が小さなP型とよばれる弾性2線ソリトン解のうち大きな方の線ソリトンは線形安定になることを証明したが,同様の議論をO型とよばれる二つの線ソリトンが大きな角度で交差する2線ソリトンに適用することで,O型の二つの線ソリトンは共に線形安定であるこが分かり,線形化方程式の解の主要部の漸近挙動は1線ソリトンの場合と同様に消散波動方程式系によって記述することができた.また前年度の議論を整理することで1線ソリトン解の周りでの線形化作用素のスペクトルと線ソリトンにより生ずる連続固有空間を決定することができた.その情報を利用することでP型やO型の2線ソリトンの周りでのスペクトルは,2線ソリトンを構成するそれぞれの1線ソリトンの周りで線形化作用素のスペクトルを重ね合わせたものになっていることが分かり,さらにO型の2線ソリトン解のまわりでの線形化作用素のスペクトルのうち,線ソリトンによって生じる連続固有空間を決定することができた. P型については大きな方の線ソリトンについてはO型と同様の結果が得られ,小さな方の線ソリトンについては例外となるスペクトルは離散的な集合にしかなり得ないことまでは分かった.
山崎は空間3次元の非線形シュレディンガー方程式について,不安定な定在波が存在し, その定在波周りの線形化作用素がinternal modesを持つ場合に中心安定多様体を構成とその中心安定多様体上の解の漸近挙動について、千葉大学の前田昌也氏と共同研究を行い, 線形化作用素に対するStrichartz評価が成立し、Fermi Golden ruleが成立する仮定の下で中心安定多様体上の解の漸近挙動を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水町はO型の2線ソリトン解の線形安定性が証明したことで, 偏微分方程式論の方法で多重線ソリトンの非線形安定性の研究をすることが可能になった. 山崎は前田昌也氏との共同研究で,非線形シュレディンガー方程式の中心安定多様体を線形化作用素が虚軸上に固有値をもつ場合に構成することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
まずP型と呼ばれる2線ソリトンについても, 昨年度までとは異なるダルブー変換の利用をすることで,安定性解析において重要となる原点付近のスペクトルの連続固有空間を決定することを目標とし,その後複数の線ソリトンが共鳴的に交差する場合の線形安定性を研究する. 今後はKP方程式による近似が有効と考えられているモデル方程式に対して,得られた成果を応用することも視野にいれて研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響のため,年度の前半においては研究集会等での情報交換をする機会があまりなかったことが影響して未使用額が生じた. 未使用額は今後分担者との共同研究や研究の遂行に必要な情報収集を行うために充てる.
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