研究課題/領域番号 |
21K03329
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
梶原 健司 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40268115)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 可積分系 / クライン幾何 / 離散正則関数 / 弾性曲線 / 対数型美的曲線 / 離散微分幾何 |
研究実績の概要 |
弾性曲線,対数型美的曲線による曲線の最適近似理論に取り組み,3Dスキャナで取り込まれた3次元点群データを平面に射影し,スムージング後に等間隔の平面点群データ(平面離散曲線)に変換し,得られた等辺離散曲線を可積分離散弾性曲線や対数型美的曲線でパラメトリックに近似する理論を構築し,実装した.これらの成果は工業意匠設計におけるリバースエンジニアリングに重要である. 相似幾何における空間曲線がゲージ変換によりユークリッド幾何の曲率一定曲線に対応すること,その可積分変形がmKdV階層とその線形問題との結合系で記述されることを示し,さらに,その線形問題はmKdV階層の対称性に付随する線形化方程式に他ならないこと示した.より一般に,曲線の変形方程式は枠の変形方程式の線形化方程式と見なせるという驚くべき事実が判明し,昨年度示した枠の積分可能性は,この対称性から従うことを示した.さらに,空間曲線の可積分変形が作る曲線族が張る曲面を考察し,「美的曲面」として,2次曲面やその変形が得られることを示した. また,ユークリッド幾何における平面(離散)曲線と捩率一定の空間(離散)曲線に対する連続・離散等周変形に対する明示公式から,特に離散閉曲線で平行移動,剛体回転がない特別の場合に制約することで,カライドサイクルと呼ばれる1自由度でエネルギーを消費せずに動く閉リンク機構の楕円テータ関数による明示公式を構成した. さらに,Michelleトラスと呼ばれる,建築学においてある種の力学的合理性を持つ古典的なトラス構造の中で,格子が離散複素正則函数としての可積分指数函数で,辺材のなす離散曲線が離散対数型美的曲線であるような,力学的合理性,可積分性,美的性を兼ね備えた構造物を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弾性曲線,対数型美的曲線による最適近似理論は予想以上に研究が進展し,建築や工業意匠設計への応用ができた.また,空間版の対数型美的曲線の定式化が進み,現在,その変形が張る曲面(美的曲面の一つの候補)の研究が進みつつあり,特に相似幾何における空間曲線の可積分変形理論において,可積分系の対称性の理論との思わぬつながりと,枠の積分公式との関連が明らかになった.さらに,空間離散曲線の等周変形の楕円テータ函数による明示公式の研究が進展し,特に空間における捩率一定の閉曲線に対する研究が完成し,リンク機構へ応用した.さらに,離散正則函数の研究から力学的合理性,可積分性,美的性を兼ね備えた興味深い構造物を発見した.以上のことから,研究はおおむね順調に進展しており,一部は当初の想定以上の発展があった.
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今後の研究の推進方策 |
空間版対数型美的曲線および「美的曲面」の研究が多方面に発展しつつあるが,可積分幾何に関わる基本理論をまとめて論文の執筆中で,2023年上半期には投稿予定である.また,対数型美的曲線とその可積分離散化についてのフルペーパーは査読の大幅な遅れで出版が遅れているが,査読の目処がついたので2023年中には出版予定である.離散正則函数と関係するトラス構造については論文を投稿中で,2023年中には出版を見込む.カライドサイクルについてもフルペーパーを執筆中であり,2023年度中の出版を見込む.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度前半までコロナウィルス流行の影響で十分な対外的活動ができなかった.2023年度は計画通り物品,旅費などに使用し研究計画を完遂する.
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