研究課題/領域番号 |
21K03330
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
三沢 正史 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (40242672)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソボレフ不等式 / 分数階積分方程式 / 非線形固有値問題 / 分数階ソボレフ熱流 |
研究実績の概要 |
分数階ソボレフ空間におけるSobolev不等式の最良定数を定める体積制限条件付き極値問題を考える. この条件付き極値問題に対する勾配流を分数階pソボレフv熱流と呼ぶ. 多孔媒質型作用素と分数階pラプラス型作用素の混合した二重非線形放物型分数階積分方程式の解として定まる. 今年度は,以下について研究した: (1) この研究計画の副産物として, 主要部のみからなる二重非線形放物型偏微分方程式の非負弱解の有限時間消滅とその漸近挙動を証明した(国際雑誌掲載済) (2) 二重非線形放物型分数階積分方程式の非負弱解の正値性伝播について研究した. 正値性伝播とは, ある時刻での正値部分(解のサポート)が時間とともに拡がることである. このためにとくに, 二重非線形放物型偏微分方程式の非負弱解の正値性伝播を証明した(プレプリント, 投稿準備中). この結果にもとづき, 分数階積分方程式の正値性伝播の論文を準備中である.これらは弱解の連続性の証明のキーとなる. (3) 二重非線形放物型分数階積分方程式の非負弱解連続性を研究した. このために, 二重非線形放物型偏微分方程式の非負弱解の連続性についていくつ結果を得た(論文準備中). (3) 偏微分pソボレフ熱流の時間無限大漸近挙動, 定常解(条件付き極値問題の解)への収束および解の体積集中現象, を明らかにした(論文準備中).この結果は, 分数階pソボレフ熱流の時間無限大漸近挙動の雛形となる. また, 一方,分数階p-Sobolev流の時間大域解を構成するために, 昨年度(令和3年度)に, 主要部のみをもつ二重非線形放物型分数階積分方程式の弱解の時間大域存在を証明した(論文投稿済, 2年査読結果待ち).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由 前回の研究計画における偏微分pラプラス作用素を伴う二重非線形方程式の非負弱解の正値性伝播, 弱解の連続性,および偏微分pソボレフ熱流の漸近挙動の証明に, 昨年度(令和3年度)以来, 予想以上に時間を費やしてしまった. また, 分数階pラプラス二重非線形退化特異放物型方程式に対する弱収束の方法を確立した結果の論文の査読結果がまだきておらず国際雑誌に掲載されていない(論文投稿済, 2年査読中). 以上の理由から, 分数階pラプラス二重非線形退化特異放物型方程式の非負弱解の正値性伝播および弱解の連続性の結果を, 今年度やっと得られつつある状況である.
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今後の研究の推進方策 |
現在, 偏微分pソボレフ熱流の正則解の大域存在とその漸近挙動の証明を構築した. 二重非線形放物型偏微分方程式の非負弱解の正値性伝播および弱解の連続性の結果を得た. また, 分数階pラプラス二重非線形退化特異放物型方程式に対する弱収束の方法を確立した. これら結果にもとづき, 分数階pソボレフ熱流を含む分数階pラプラス二重非線形退化特異放物型方程式の非負弱解の正値性伝播,弱解の連続性および分数階pソボレフ熱流の時間大域正則解の存在の証明に集中して取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費使用の計画立案の段階では, 令和3年度, 国内大学での関係研究者との研究打ち合わせおよび情報交換のため国内出張を多数予定していたが, 結局, コロナ感染症の流行が収まらず, すべての国内出張を断念せざるを得なかった. 代替措置として, メールおよびZoomなどの遠隔機器による研究打ち合わせおよび情報交換を行った. このため, 当初予定の旅費の使用ができず令和4年度使用額が生じた. 令和4年度には, 感染症の収束を見ながらいくつかの国内出張および年度末には海外出張も行った. しかし, 旅費など使いきれない分が生じた. 令和5年度には, 感染の状況は収まるとみられるので, 国内出張および海外出張も計画する予定である. また, 研究計画遂行のための関連文献の購入, 新規の遠隔機器および印刷機器の購入, または, 国際雑誌への公表論文のオープンアクセスなどを進める予定である.
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